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- 2015.02.02
- 情勢/解説
公明新聞:2015年2月2日(月)付
後継者不足に悩む中小企業に人材を供給するため政府が設立を進める「後継者人材バンク」と、文化庁が2015年度の創設をめざす「日本遺産」認定制度について解説する。
中小企業向けの人材バンク
後継者難に悩む事業主と創業希望者を引き合わせ、事業の引き継ぎにつなげる。政府は全国での開設をめざす。
Q 後継者に悩む中小企業向けの人材バンクが開設されると聞いたが。
A 「後継者人材バンク」という取り組みだ。起業家を中心にバンクに登録してもらい、後継者不在で相談に訪れた事業者の希望と照らし合わせ、双方を引き合わせる。債務整理など実務的な条件を調整し、事業の引き継ぎにつなげる。
バンクは、事業承継に関する相談窓口として静岡商工会議所に設置された「静岡県事業引継ぎ支援センター」が全国の第1号だ。現在、岡山、長野両県の支援センターにも開設されている。県レベルでの取り組みを踏まえ、政府は全国13カ所の「事業引継ぎ支援センター」で順次スタートさせ、将来は各都道府県に展開していく方針だ。
バンクに登録する創業希望者は、各都道府県の地方銀行や商工会議所が開く起業セミナーなどで呼び掛ける
Q ニーズはあるのか。
A 中小企業の後継者難は深刻化している。経営状況は健全でも、後継者難などで事業の継続を断念する企業が増えている。中小企業白書(14年度)によると、13年の企業の休廃業・解散件数は2万8943件(東京商工リサーチ調べ)に上り、10年前に比べると2倍以上に膨らみ、倒産件数を上回る水準で推移している【グラフ参照】。後継者難に悩む個人事業主が、何らかの機関で相談することもなく廃業してしまうケースが多いのが現状だ。
政府は中小企業の後継者確保を後押しし、事業承継による雇用の維持や、経営者の世代交代による新事業への転換につなげる考えだ。起業家にとっても、土地や建物を借りて起業するより、既存の企業を引き継いだ方がコスト面で有利な場合がある。
Q 引き継ぎは容易ではないと思うが。
A 確かに、静岡県のバンクでも事業承継が実現した例はまだない。しかし、15年1月現在、人材を引き合わせたのは11件に上り、そのうち5件が事業の引き継ぎに向けた話し合いを進めており、1件が成約に結び付きそうだという。バンクが周知されれば、より活用されるのではないか。
「日本遺産」制度の創設
点在する文化財を地域的なつながりや時代的な特徴ごとにまとめ、認定する仕組み。認定遺産には整備費などを補助。
Q 新しくできる「日本遺産」認定制度とは。
A 国内各地の文化財を地域的なつながりや時代的な特徴ごとにまとめ、認定する制度だ【イラスト参照】。文化庁は15年度に創設する考えで、公明党も実現を推進している。
具体的には、地域に点在する城や遺跡、伝統芸能などの文化遺産や歴史を一つのテーマでくくって自治体が申請し、有識者による委員会が認定を行う。文化庁は対象として、古くから守られてきた町並みや、天守閣がある城、同時期に造られた大規模な大名庭園などを例示している。
認定遺産に対しては支援も行われる方針だ。多言語によるパンフレットの作成やガイドの育成、ご当地検定の実施、遺産周辺でのトイレや説明看板の整備にかかる費用を補助する。これらの予算として、文化庁は15年度予算案に約8億円を計上している。
Q 制度の狙いは。
A 全国各地の文化財を保護の対象とするだけでなく、国内外からの観光客を増やすための観光資源としても積極的に活用していくのが狙いだ。
文化庁は「文化財版クールジャパン」と位置付け、観光庁などと連携した海外発信も重視している。例えば、日本の文化財を海外向けに「日本の至宝」と統一することで、"至宝"を巡る旅行プランや専用のウェブサイトなどで分かりやすく宣伝することもできる。
Q 自治体からの反響は。
A 国際的な知名度の向上が見込める世界遺産の審査が年々厳しくなる中、同様の宣伝効果が期待できるとあって「全国からかなりの数の問い合わせが相次いでいる」(文化庁記念物課)という。既に申請に向けて準備を進めている自治体もある。
世界遺産の暫定リストには現在、11件が記載されている。中には、滋賀県彦根市の彦根城など20年以上暫定リストにのったまま推薦までに時間がかかっている場合もある。たとえ、推薦に至らなくても日本遺産として認められれば、国内外での評価が高まり、地元が活気づくと期待されている。