eコラム「北斗七星」

  • 2015.02.05
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年2月5日(木)付




日本人のマニュアル好きは、今に始まったことではないらしい。立春とはいえ、まだ冷たい水で顔を洗いながら、江戸期、藩主の手洗いや、うがいにまで手順書があった史実を思い出した◆3万石の小藩、岩村藩に伝わる『勤向諸事心得覚』。これによれば、藩主は朝起きると、まず、うがい。朝食が済めば、またうがい。さらに朝から湯殿で必ず手足を洗う。加えて旧暦の5月5日からは水、9月9日以降はお湯を使うとまで定めていた◆「手順にきちんと従うまじめさで成果をあげてきた国民」。磯田道史氏は『歴史の愉しみ方』(中公新書)で心得覚を引き評する一方、「マニュアルはその型を破ってさらに上の段階に進むためのもの」とした。固定観念に縛られては成長しないと言いたかったのだろう◆かつてサムスン電子の顧問だった福田民郎氏が数年前、大学の教え子の話にショックを受けたことがあった。中国向けの冷蔵庫を開発しているのに、中国には1回も行ったことがないというのだ。「リポートを読んでいるだけでは、感動を与える商品を作れるわけがない」(読売)と◆『巨人の星』は野球をクリケットに変えてインドで放送され、ランドセルが"かっこいい"と外国人観光客から人気を博す時代だ。型を破り、どう勝機をつかむのか。現場感覚と変化への対応力が求められている。(田)

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