e欧州経済危機 ギリシャとEU 歩み寄り必要
- 2015.02.05
- 情勢/解説
公明新聞:2015年2月5日(木)付
新たな経済危機の始まりにしてはならない。財政難にあるギリシャで、急進左派連合(SYRIZA)と「独立ギリシャ人」による連立政権が発足。新政権は、前政権が欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)による総額約32兆円規模の金融支援の引き換えとして公約した緊縮財政策の見直しを主張している。
2010年5月以来続く緊縮策の結果、国内の失業率は25%台に達し、日常生活を送ることが困難な市民が急増した。国民の強い不満に押されてギリシャ政府が緊縮策の見直しを進めている格好だが、金融支援の返済額の減免要求を事実上の債務不履行宣言と受け止める向きもある。
ギリシャが返済義務を負う債務の約8割は、海外の政府や公的機関向けだ。無条件での債務減免になれば通貨ユーロの価値が傷つき、国際金融市場にも悪影響を与える。金融支援における最大出資国のドイツのショイブレ財務相は、欧州全体が新たな財政負担を負う債務減免の要求に強い反対の姿勢を示している。
仮に債務減免となっても、同国経済の根本的な立て直しにつながるかは不透明だ。EUから別途受けている金融支援プログラムは2月末に期限を迎え、年金給付など財政資金が枯渇する恐れがある。今夏には大量の国債償還期限を控え、資金繰りに行き詰まればギリシャ国内が再び混乱することも予想され、ギリシャがユーロ圏から離脱する懸念もあるという。共通の金融政策の実行が求められるユーロ圏からの脱退で政策の自由度を高める狙いだろうが、EUの政治的結束に亀裂を生む危うい選択肢だ。
ギリシャと欧州全体の双方にとって、プラスとなる解決策をなお模索すべきではないか。欧州加盟国には、同国経済の再建に時間が必要な実情を踏まえ、債務返済期限の延長でギリシャとEUの歩み寄りを促す声もある。経済再建に向けたギリシャの努力が欠かせない。
欧州経済はデフレ転落の瀬戸際にある。状況を改善するために欧州中央銀行が量的金融緩和に踏み切ったばかりだ。欧州経済の再生に向けた動きに水を差す政治的混乱を国際社会は望んでいない。