e林業の再生 地方を活性化する成長産業に
- 2015.02.17
- 情勢/解説
公明新聞:2015年2月17日(火)付
国土の3分の2を森林が占める日本において、林業の再生は地方の活性化にも直結する重要な課題だ。1964年の木材の輸入自由化以降、安価な輸入材の供給量が急増。国内の木材生産額は減少し、林業は縮小の一途にある。
その中で、円安に伴う輸入材の価格上昇によって、住宅建築に国産材を使用するニーズが少しずつ高まっている。久々に巡ってきた日本林業への追い風を生かし、成長産業に飛躍させる好機にしたい。
政府は、2020年までに木材自給率を50%以上とする目標を掲げ、森林や林業の再生を国家戦略に位置付けている。植林や伐採など森林事業の集約化や低コスト化対策を強化して国産材の安定供給をめざす。ぜひ、目標を達成してもらいたい。
林業再生の目玉として注目を集める動きも出ている。「クロス・ラミネイティド・ティンバー」(CLT=直交集成材)と呼ばれる新しい建築材だ。CLTは、木の板を何層も貼り合わせた集成木材で、耐震性や防火性に優れる。
現在は実証段階だが、国土交通省は来年度中にも建築資材として認める方針だ。実現すれば幅広い木材建築が可能になり、多方面での大幅な活用が期待される。CLTの普及によって林業が活性化すれば、残材のバイオマス発電の利用が進んだり、森林の荒廃に歯止めを掛けられる。
国会で審議中の来年度予算案には、CLTの生産企業に設備導入費を助成する交付金が盛り込まれている。積極的に活用してほしい。
担い手の確保も欠かせない。総務省の調査によると、林業従事者数は年々減少しているが、35歳未満の従事者の割合は上昇傾向にある。世代交代が進むと課題になるのが、木材の運搬や加工方法など林業技術の継承だ。新規就業者が必要な技術を習得できる研修体制の充実に十分配慮しなければならない。
地場産業である林業で働く若者が増えると中山間地など地方への移住が進み、地方創生の後押しになる。政府だけでなく自治体も待遇や安全面に十分配慮し、若者雇用の受け皿として充実させる取り組みを強化していくべきである。