e女性有資格者の復職支援を

  • 2015.02.25
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年2月25日(水)付




歯科衛生士・看護師・保育士... 

講習会で実習など行う  

現場では人材不足が深刻化



公明党は今月発表した統一地方選重点政策に、子育てなどで離職した女性の再就職支援を盛り込んだ。その具体策の一つとして注目されるのが、保育士や看護師の資格を有しながら、その職に就いていない潜在有資格者の復職支援だ。各分野での取り組みを取材した。


歯科医療で予防処置や診療補助などを行う歯科衛生士は、女性に適した専門職だが、絶対数不足が問題となっている。歯科衛生士の登録者数は2014年3月末で約25万人に上るものの、就業者数は12年末で、約10万8000人にすぎない。


こうした現状から、神奈川県歯科医師会は、歯科衛生士の職に就いていない潜在有資格者に着目し、09年度より年1回、復職支援講習会を開催している。


講習会は3日間にわたり、座学と実習、協力医院での現場見学を行う。受講生の9割が、結婚や出産を機に退職し、子育てに余裕ができた時期に再就職をめざす人たち。


受講生の8割は10年程度のブランクがあるが、実習で手を動かすと体が技能を覚えている人も多いという。同会事務局の担当者は「講習を受けて自信につながったという声をよく聞く」と語る。


13年度までの講習会後の調査結果によると、166人のうち就職した人が100人、就活中が41人と、復職の成果も上々だ。「週1回だけでも勤務してほしい」との求人を出す歯科医院もあるほどの人材不足に、復職支援は重要な役割を果たしている。



6割が就業



団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる25年に約200万人までの増員が必要とされる看護師。12年現在で約154万人だが、潜在看護師は約71万人とも推計され、掘り起こしが急務とされる。



全国の潜在看護師の1割を抱える東京都では、都看護協会のナースプラザが復職支援研修を行っている。研修コースは、いずれ再就職したい人向けの「1日間」、再就職に向け少しずつ準備をしたい人向けの「5日間」、すぐにでも再就職したい人向けの「7日間」――の3コース。都内31施設の病院で年3回、実施される。座学と技術訓練、病院研修が主な内容。「研修を受けて1~2年たつと6割ほどが就業している」(同プラザの須釜なつみ所長)そうだ。参加者は年々、減少傾向にあるが、これは独自に研修を行う医療施設が増えたためで、復職支援のニーズは逆に高まっている。


このほか、同プラザは、看護職版のハローワークであるナースバンク事業なども運営している。



自信をつけて



将来必要とされる人数に供給が追いつかない現状は保育士も同じだ。国を挙げて保育所待機児童の解消に取り組んでいるが、保育士は17年末までに約7.4万人不足する見込み。60万人以上いる潜在保育士に熱い視線が注がれる。


東京都福祉人材センター内にある都保育人材・保育所支援センターでは、保育士資格を持つ人などへの就職支援を展開。コーディネーターによる窓口相談のほか、都内各地で研修・相談会やセミナーを開催している。


一方、25年度に約30万人不足するとされる介護職員についても、都福祉人材センターは、ヘルパーや介護福祉士など介護職の復職研修に力を入れている。同センター人材情報室の平賀由香室長は「以前に比べて腰を痛めない介護方法などが発達してきた。そういう技術を学んで自信をつけてほしい」と訴える。



復帰後のフォローも重要



潜在有資格者の復職をスムーズに進め、職場への定着につなげるために重要なのが、復職先とのミスマッチの解消だ。せっかく就職しても「自分が考えていた職場環境と違う」と辞めてしまう人が少なくない。


神奈川県に在住し復職を考える元看護師は「採用の面談時、子育てに配慮した採用条件を示してくれても、実際の配属先では対応できない人数やシフトで動いていることがある」と実情を述べる。都内の公立保育園の園長も「早番や遅番、一時保育の対応など、保育士は即戦力で働いてもらわないといけない」と、細やかな配慮が難しいことに頭を悩ます。


また、就業者自身の子どもの保育環境の充実や、柔軟な勤務制度の導入も欠かせない。都内の公立保育園の非常勤保育士は「子どもを出産し育児休暇を取った際、『子どもを預ける保育園が見つからないと解雇する』と言われた」。先に紹介した元看護師も「自分の子どもに何かあっても、患者の診察が終わらない限り、簡単には抜け出せない」と語る。


復職後の相談・支援などフォロー体制をどこまで構築できるか。現場レベルでの努力を支える取り組みが不可欠だ。

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