eプレミアム付き商品券 地域活性化にどう生かす
- 2015.02.26
- 情勢/社会
公明新聞:2015年2月26日(木)付
「品質志向」刺激する工夫を
使用範囲の拡大で消費喚起
地元産業の強化につなげる
公明党の推進で、プレミアム(割増)付き商品券の発行を決める自治体が相次いでいる。国の2014年度補正予算
に盛り込まれた「地域消費喚起・生活支援型」の交付金(2500億円)を活用した事業。この商品券発行を地域経 済の活性化につなげていくために、何が必要か。日本リサーチ総合研究所・主任研究員の藤原裕之氏に見解を聞 くとともに、商品券発行に力を入れてきた東京都世田谷区の状況を追った。
日本リサーチ総合研究所 主任研究員 藤原裕之氏に聞く
―プレミアム付き商品券の経済効果について。
今回の商品券の発行支援は消費喚起策として期待感が持てる政策だ。自治体などが発行する商品券に国の支援で 販売額に1~2割程度のプレミアムを付ける。過去に実施された定額給付金などは現金を支給する「給付型」で所 得政策に近いものだったが、今回は住民による購入が前提となる。決定的に違うものだ。自治体の工夫次第では 、より高い費用対効果を生む可能性があり、「バラマキ」という批判は全く当たらない。
―商品券の効果を高めるには。
商品券の費用対効果を高める観点は三つある。一つは何が買えるか、二つ目はどこで使用できるか、三つ目は誰 が使えるか、という視点だ。
まずは、住民が購入したくなるか、そこが一つ目のハードルとなる。プレミアム分で支払いを代替するだけでは 消費喚起の効果はまだ足りず、普段の消費に加えてプラスアルファの消費を引き出さないといけない。
消費税率の引き上げ後、消費者の節約志向が強まった。増税後の反動減からの回復がいま一歩見られないのも、 そのためだ。もう一つ、消費者の意識には、そうはいっても「良い物を買いたい」という品質志向が引き続きあ る。どちらに火を付けるかで消費刺激の効果は変わってくる。
―どのような工夫が必要ですか。
プレミアム付き商品券では、品質志向で、どちらかというと普段はあまり買わないモノやサービスの消費を刺激 するものを企画するといい。例えば、レジャーや旅行、娯楽、あるいは家電製品などの耐久財だ。以前、東京都 墨田区で発行した商品券は家電量販店でも使えるもので、好評だった。一般的に所得が低い地域では、より日常 的な商品券でもよいが、やはり住民の意向に沿った視点は欠かせなだろう。
―商品券が使える範囲の設定は。
使える範囲については、今までは商店街の活性化をターゲットにしてエリア内に限っていたが、これを拡張する やり方があり得ると思う。地方の山間部などで商品券は有効かといった議論がある。域外にも広げた方が住民の 満足を高め、消費刺激を高めることにつながっていく。消費刺激という観点では重要だ。
―自治体の垣根を越えた使われ方も検討すべきですか。
そうだ。東京都世田谷区で実施された例だが、商業地である特性を生かし、大型商業施設でも使える商品券を区 外の人にも販売した。広く地域を活性化させるという視点で地元自治体以外の人々にも広げることを検討しては どうか。
各地域が画一的に、商店街のみを対象に発行していくだけでは、規模が小さな所得政策に陥ってしまい、消費喚 起の効果を十分に生まないだろう。
―商品券の消費喚起効果を地域経済の好循環につなげていくためには何が必要ですか。
地方の場合、ローカル経済圏の中心であるサービス業、地域密着型の中小企業といった地元産業の強化が必要だ 。今回の商品券発行を通して、自治体はこうした地元産業の活性化に積極的に関わってほしい。産業が弱ければ 、需要刺激といっても最終的に地域の所得向上につながっていかないからだ。そうした政策も地方では必要だろう。
自治体によってまだ意識に差があるし、今回の発行支援は年度内の予算編成に限っている。この政策は一過性で なく継続させてはどうか。高い費用対効果を生み出せるのであれば、持続的な政策にもなり得ると期待している。
発行を継続、にぎわい創出
東京・世田谷区
東京都世田谷区では2009年から、区内約4000店舗で使えるプレミアム付き商品券の発行支援を続けてきた。発行 額は当初の5億5000万円から11億円へと増やし、14年度も実施。高齢者や障がい者,子育て世帯には、はがきに よる事前予約も行うなど工夫も凝らす。大型商業施設でも利用できるとあって区内外の需要を呼び込み、地域のにぎわいを創出してきた。
同区が昨年6月に行ったアンケートでは、今後も購入するという回答が全体の約98%に達した。その効果については、「商店街で買い物をする機会が増える」との回答が約63%に上った。同区商業課は「景気動向などを踏まえながら実施してきたが、今後は経済効果も測りたい」と意欲的だ。
同区は、国の補正予算を活用し、6月から使える1セット1万円(1万2000円相当分)の商品券発行を予定している。発行額は14年度よりさらに倍増し、24億円とする方針だ。