e災害時の帰宅困難者 企業が受け入れやすい環境作れ
- 2015.02.26
- 情勢/解説
公明新聞:2015年2月26日(木)付
首都直下地震の発生に備え、帰宅困難者の滞在先を確保しなければならない。内閣府や東京都などでつくる連絡調整会議は先週、帰宅困難者を受け入れる一時滞在施設の運営指針を改定した。受け入れ先として企業から協力を得やすくするため、免責事項が盛り込まれた。
内閣府によると、首都直下地震での帰宅困難者は、東京、茨城、埼玉、千葉、神奈川の1都4県で最大800万人と想定される。政府は大災害が発生した場合の混乱を防ぐため、企業や学校に対して従業員や学生らを無理に帰宅させず待機させるよう求めているが、都内だけでも買い物客など約92万人が行き場を失う。
民間企業を一時滞在施設として活用する場合、市区町村と企業が協定を結ぶ。東京都では、公共施設や企業など約570カ所の一時滞在施設を確保しているが、なお約73万人分が不足する。
受け入れ施設を増やすためには、オフィスビルや商業施設などを持つ企業の協力が不可欠だ。しかし、余震で施設が壊れて利用者がけがをすると、その責任を問われないかなどと懸念する企業は少なくない。
そこで改定指針では、災害発生に備え、受け入れ条件や承諾の署名欄を記載した書面を、一時滞在者向けに準備しておくよう施設所有者に要請している。併せて、(1)施設は善意で開設されていることを理解する(2)管理者の指示に従わない場合は退去を要求する可能性もある(3)事故などについては故意や重過失がない限り責任を負わない―などの受け入れ条件を例示した。
ただ、都の調査によれば、企業が受け入れをできない理由として、利用者用のスペースや水・食料の備えがないことも挙がっている。国や自治体は指針を周知するとともに、受け入れに必要な備蓄品の購入費などを支援し、企業の理解と協力を求めることも必要だろう。
帰宅困難者対策は首都圏以外でも共通する課題だ。南海トラフ巨大地震が起これば、大阪や名古屋でも大量の帰宅困難者が発生する。政府は首都直下地震以外に想定される大規模地震にも、指針の内容が適用されるよう普及策を検討してもらいたい。