e原発汚染水の流出 データ公開の迅速・透明化を
- 2015.03.04
- 情勢/解説
公明新聞:2015年3月4日(水)付
東京電力福島第1原発の汚染水問題で、これ以上国民の信頼を失う事態を繰り返さないよう、東電に万全の対応を求めたい。
東電は先週、福島第1原発2号機原子炉建屋の屋上に溜まっていた、比較的濃度の高い汚染水が排水路を通して外洋に流出していたことを発表した。問題の排水路で降雨のたびに放射性物質の濃度が上がっていたことを、東電は昨年4月から把握していたという。
東電は、これまでもデータや事件の発生を速やかに開示せず、何度となく批判されてきた。その体質が一向に改まらないまま、今回も速やかな公表を怠ったことで、東電に対する国民の信頼は大きく損なわれた。東電は、真摯に反省して早急に改善策を講じるべきだ。
特に、国民の目線に立った迅速で透明性の高い情報公開のあり方を検討・実施してもらいたい。
東電の社内組織・福島第1廃炉推進カンパニーの増田尚宏最高責任者は、問題となった排水の濃度について、技術者の視点から「(改善策の効果を測る)データとしての感覚しかなかった」と反省を述べ、一連の対応を住民がどう受け止めるかについて配慮を欠いたと認めている。
今なお福島県民を苦しめる風評被害をはじめ原発事故の影響は、必ずしも数値で測れるものではない。数値だけにとらわれ、地元住民に対する配慮を怠れば、同様の事態を繰り返しかねない。
汚染水流出問題を公表した後、経済産業省を訪れた増田氏に対し、高木陽介・経産副大臣(原子力災害現地対策本部長=公明党)が「被災者、国民の視点に立って」考えられるリスクの総点検を指示したのもこのためだろう。
東電は、汚染水を減らすために、原発建屋付近の井戸(サブドレン)から地下水をくみ上げ、浄化して海に流す計画をめぐって地元漁業者と交渉している。だが、今回の事態で漁業者の反発は強く、東電との協議の凍結を決定した。
交渉再開と早期の計画実行は、一段と厳しくなるのは避けられない。東電は、漁業者ら地元住民の理解を最優先に、誠意を尽くし信頼回復に努めなければならない。