e地方鉄道の再生 輸送と線路管理の経営分離で

  • 2015.04.01
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年4月1日(水)付




地方の鉄道会社が抱える課題は、共通しているといえよう。利用客の減少で採算は悪化。半面、公共交通機関の立場を担うことから地域住民の移動手段を守らねばならない。相反するような課題を解消するには、会社が経営効率化と輸送サービスの改善に専念できる環境が必要である。


京都府と兵庫県の北部地域を走る京都丹後鉄道(旧北近畿タンゴ鉄道)が、きょう1日から「上下分離方式」による鉄道経営に切り替わる。線路を走る電車の運行業務と、線路の維持管理を別会社が経営する。


鉄道会社は線路の敷設や保守点検と輸送サービスを一体的に提供するのが通例だが、経営が悪化する地方の鉄道会社にとって一体的運営は負担が重い。上下分離で線路の維持・点検費用を削減できれば、運行業務を担う会社は余力を輸送サービスの改善に振り向けることができる。


"日本一のローカル線"の構築を掲げ、サービスの多様化で収益改善につなげている「わかやま電鉄貴志川線」(和歌山県)は、上下分離方式の成功例だ。こうした取り組みの成果もあり、兵庫県内を走る神戸電鉄をはじめ、全国各地で公明議員が上下分離方式の導入を提案している。超低床路面電車(LRT)の整備を進める栃木県宇都宮市でも導入の検討が始まった。上下分離方式は、地域の移動手段を守りつつ、鉄道経営を再生に導く地に足の着いた方法であろう。


上下分離方式を鉄道経営の改善に結び付けるには、政策的な支援も必要である。地方鉄道の利用客の大半は、地域で暮らす住民だ。地域住民の意向を十分に踏まえれば、地方であっても利用客の増加は期待できるのではないか。


公明党は高齢化社会の進展をにらんで中山間地域で、商店や診療所など生活に必要不可欠な施設を一カ所に集約する「小さな拠点」の整備を後押ししている。さらに、周辺の中山間地域同士を結び付ける役目として公共交通機関の活用を掲げている。中山間地域が小さな拠点を起点に鉄道で結ばれれば、ヒトとモノの交流が活発化し輸送サービスの需要も増加するだろう。


地方の暮らしを支えるための鉄道再生が望まれる。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ