eコラム「北斗七星」
- 2015.04.30
- 情勢/社会
公明新聞:2015年4月30日(木)付
北ベトナム軍が南ベトナムの首都サイゴンに進攻したのが40年前のきょう。ベトナム戦争は終結し、南側を全面支援したアメリカは敗退した。20年後、ベトナムとアメリカは国交を回復。2011年には合同軍事演習を行うまでに関係を深めている◆凄惨な戦闘を繰り広げた両国が手を結ぶように、国際情勢は時に激変する。こうした場面で問われるのが各国首脳の外交手腕だ。アメリカのベーカー元国務長官は、回想録「シャトル外交 激動の四年」の中で、政治家や外交官が成功するには「人望」が必要と指摘する◆彼は在任中、ソ連邦の崩壊やドイツ統一、イラクのクウェート侵攻などに次々と対処した。特に湾岸危機に際しては、イスラエルとアラブ諸国の対立、アラブ諸国間の利害、国連常任理事国の思惑などが複雑に絡み合う中、粘り強い交渉でイラク包囲網を築いた◆友好関係にはない相手からも一定の信頼を得る。そのための秘訣を、彼は「言行一致、約束履行」と強調する。国際舞台で活躍する政治家にとどまらず、地方議員にも必要な姿勢だろう◆もう一つ。優れた政治家は「権力の使い方と限界を熟知している」と説く。世界一の軍事力を有しても「アメリカは世界の警察官にはなれない」との彼の洞察は、ベトナム戦争から学んだ教訓なのかもしれない。(幸)