eコラム「北斗七星」

  • 2015.05.07
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年5月2日(土)付



森鴎外の小説「舞姫」の自筆草稿が今秋にも、文京区立森鴎外記念館で公開される。第一級の近代文学資料だけに、今からその日が待ち遠しい。軍医の肩書きも持ち、多忙を極めたに違いない明治の大文豪。実は子煩悩だった◆夜中、トイレに立った幼子の付き添いをしたり、娘の勉強の面倒を見た。あやとりの相手もしていたという。厳父のイメージがあるが、温かくわが子を見守り、日常的に接していた様子が、ほのぼのと伝わってくる◆子どもの虐待に関する報道に接すると、やりきれない気分になる。理由はどうあれ、親の責任は免れない。まして、一人で子育てをすることは極めて難しいという現実は、時代が移れども変わらない◆かつて子どもは、多世代の中で育まれることが多かった。今は、一人の親だけで子育てに当たらざるを得ないケースがある。「社会との交流が遮断され、他の人の手も期待できない孤独な子育ては、おとなの心理的安定を阻害する」(「父親になる、父親をする」柏木惠子著)。孤独な子育てを放置しない、支えが不可欠なのである◆母子・父子世帯への手厚い支援が必要だ。耳の痛い話だが、母親任せも見直した方がいい。子育てに積極的に関わる男性の方が仕事一辺倒の男性よりも、強い生きがいをもち、ストレス対処能力が高いそうだ。(広)

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