e憲法論議にどう臨むか

  • 2015.05.07
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年5月3日(日)付



公明党憲法調査会 斉藤鉄夫会長代理に聞く 

3原則は平和国家の礎



戦後70年を経て、日本国憲法のあり方をめぐる議論が高まりつつあります。公明党は、現行憲法をどう評価しているか、「加憲」の対象に関する党内論議の現状などについて、党憲法調査会の斉藤鉄夫会長代理(衆院議員)に聞きました。


―現行憲法の評価は。


斉藤鉄夫・憲法調査会長代理 日本国憲法について、公明党は、戦後日本の平和国家としての基礎になったと高く評価しています。


特に、恒久平和主義、基本的人権の尊重、国民主権主義という憲法3原則は、人類が長い時間をかけて獲得してきた普遍的な原則であり、これからもずっと守り続けていくべきだと考えています。



改正は「加憲」方式で



―公明党が主張する「加憲」とは。


斉藤 加憲は、憲法3原則を守りながら、時代の進展に伴う新しい考え方・価値観を憲法に加えることです。加憲の対象となる項目については党内議論を進めている段階ですが、例えば、環境権やプライバシー権など新しい人権や、財政健全化の明記などが対象に挙げられています。


地方自治については、地方創生に取り組む中、地方自治の本来の趣旨を明確化する条文を加えるべきとの意見があります。


―9条については。


斉藤 戦争放棄を定めた第1項、戦力不保持などを定めた第2項を堅持すべきという点では、党内で合意ができています。その上で、自衛隊については、専守防衛、国連平和維持活動(PKO)の実施主体として存在を明記すべきとの意見と、既に実態として合憲の自衛隊は定着しており、あえて書く必要はないとの意見と、両論あります。


―人道復興支援など国際貢献を明記することは。


斉藤 国際貢献をもっと明確に打ち出す必要があるという意見があります。ただし、9条に書き加えるか、前文に盛り込むか、別建てで起こすかなど、どのように表現するかは意見が分かれているのが現状です。



環境権など議論の対象に



―環境権の議論の状況は。


斉藤 公明党は、以前から環境権を加憲対象として挙げてきましたが、その考えは全く変わっていません。国民には、良好な環境の中で生活する権利があり、国家には、それを保全する責任があります。


その上で議論を深めたいのが、保全すべき環境とは何か、ということです。人間のための環境保護なのか、生態系それ自体を保護の対象とするのかなど、より厳密に議論していかねばなりません。


―生命倫理のあり方は。


斉藤 生殖医療、再生医療、遺伝子技術の発展に伴い、学問の自由とのバランスを取るため、憲法に生命倫理の条項を加えるべきではないか、との意見があります。個人の尊重や学問の自由を超えた「生命の尊厳」という概念を明記することは重要です。


―国民投票の投票権、選挙権を「18歳以上」に引き下げることについて。


斉藤 選挙権年齢を「18歳以上」に引き下げようという動きが初めて出てきたのは、憲法改正の国民投票法の議論の中でした。公明党は当初から、国の将来を規定する憲法の改正手続きのための国民投票では「若い人の意見が大事だ」との観点から、「国民投票権」の年齢は「18歳以上」と主張してきました。


その国民投票権の議論から、公明党は「選挙権」についても「18歳以上」とすべきと主張してきました。今回、「18歳選挙権」を盛り込んだ公職選挙法改正案が、与野党6党で国会に共同提出され、今国会で成立する見通しとなったことを、高く評価しています。


また、昨年6月に成立した改正国民投票法(与野党共同提出の議員立法)では、施行4年後に「国民投票権」の年齢を「18歳以上」に引き下げると明記。同法をめぐる議論の中で交わされた与野党8党の合意文書では、同法施行後4年を待たずに選挙権年齢が引き下げられた場合は、国民投票権の年齢も同時に引き下げるとしました。いずれにしても、18歳選挙権は、来年夏の参院選までにぜひ実現させたいと考えています。



「期限ありき」でない、与野党超えた幅広い合意が不可欠



―今後の憲法改正議論の進め方について。


斉藤 まずは党内議論をしっかり行います。何を加憲するのか。例えば環境権など項目を絞り込み、どのような課題があるのかについて議論していきます。


同時に、国会の憲法審査会の場でも活発に議論していきたい。その際、大切な点が二つあります。一つ目は「改正ありき」「期限ありき」ではないこと。幅広い民意を集約した結果としての憲法改正でなくてはいけません。


もう一つは、与野党を超えた幅広い政党による合意です。政党の中には「一字一句変えさせない」という主張もあるので、全ての政党の合意は不可能かもしれませんが、それでも主だった政党が合意を形成することが望ましい。


憲法改正は今後50年、100年と長きにわたり国のあり方を決めるものです。国民の間での幅広い議論も当然、必要になってくると思います。

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