e建設業の人材確保 教育訓練や保険加入の促進を
- 2015.05.08
- 情勢/解説
公明新聞:2015年5月8日(金)付
近年、建設業界の担い手の確保が大きな課題となっている。2020年の東京五輪・パラリンピック開催や東日本大震災の復興に伴う建設需要が増加しているためだ。
状況を改善するため、国土交通、厚生労働の両省が、今年度に取り組む「建設業の人材確保・育成策」を取りまとめた。両省が連携して若年者の入職促進や教育訓練、雇用管理に関する助成金の活用を促すほか、社会保険の未加入対策も行い、建設労働者の処遇見直しを進める。
太田昭宏国交相(公明党)に対し、建設業の人材確保や若年入職者の就労環境の整備などを13年6月に提言している公明党としては、両省の取り組みを評価したい。
バブル経済崩壊後の不況のあおりで建設業界の就業者数は、1997年の685万人をピークに、14年は505万人にまで減少している。就業者の高齢化も進んでいる。55歳以上の占める割合は約34%に上り、全産業の平均(約29%)を上回る。
災害大国・日本において、建設業はインフラの整備はもとより、国の安全や発展を担う重要な産業であり、人材の裾野の広がりは不可欠だ。
今回の対策には、女性の入職促進が盛り込まれた。建設現場は男性社会の印象が強いが、女性ならではの視点を生かした建築デザインなど、活躍の場は広がっている。建設現場での受け入れ環境の整備など、女性が活躍できる環境の向上は業界の活性化にも直結する。
建設業界には、仕事の魅力や役割を分かりやすく伝え、イメージアップするような工夫を求めたい。雇用保険、健康保険、厚生年金の3保険に全て加入している人は3人に2人だ。加入率を高めて安心して働くことができる職場環境をつくる必要がある。
若年者の確保や育成も急がなければならないが、建設現場では知識や技術の継承のために人や時間を振り向ける余裕はないのが現状だ。その一方で、都内の小規模建設会社では、技能者などの資格取得を社費で奨励するなど、独自の人材育成に取り組んでいるケースもある。こうした動きを広めていけないだろうか。政府や自治体は、好事例を関係者に周知してもらいたい。