e英国総選挙 安定と民意反映に揺れた選択

  • 2015.05.11
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年5月9日(土)付



7日に投開票されたイギリス議会下院の総選挙は、当初の予想とは異なり与党の保守党が議席を大きく伸ばし、有権者が引き続き保守党主導の政権を選択する結果となった。スコットランドの独立や、英国のEU(欧州連合)からの離脱を求める世論が台頭する中、英国民は政治の混乱を避け、安定を求めたといえよう。


保守党を率いるキャメロン首相は、勝利宣言の中で、近日中に新政権を発足させ、選挙で示された民意を踏まえて国内の団結を図っていく考えを強調した。


英国内の事前の世論調査によると、二大政党である保守、労働両党の支持率は直前まで拮抗していた。また、地方自治権の拡大など二大政党とは異なる選択肢を示す政党にも支持が広がっていた。


保守党が躍進した背景には、スコットランド独立をめざすスコットランド民族党(SNP)に対する、イングランドなど他の地方の有権者の根強い危機感が指摘されている。英国の分裂回避を訴えた保守党の選挙戦略が支持拡大につながったという見方が有力だ。堅調な英国経済も与党である同党への追い風となったことは間違いない。


ただし、英国内のメディアは保守党の勝利を「かろうじて過半数」と伝えた。一方で、選挙前は6議席しかなかったSNPが総定数(650)の1割近い議席を占めて第3党に躍り出たため、二大政党制の退潮が印象づけられた。これは、多様な民意の反映を求める英国民の心情を映し出したのではないだろうか。


このため、キャメロン首相は、今後の政権運営に関して「全ての人たちのための政治を行う」と強調し、スコットランドへの権限移譲を進めていく方針を示した。


EUからの離脱をうたう英国独立党の台頭に押される形で、保守党は、離脱の賛否を問う国民投票を17年末までに行うことを公約に掲げた。仮に英国がEUから離脱した場合、欧州の金融センターの地位は揺らぎ、輸出の停滞などを招くことで堅調な経済への影響が避けられない。


英国政治は、引き続き、多様な民意の反映と政治の安定の両立という難しいかじ取りを迫られる。

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