eコラム「北斗七星」
- 2015.05.15
- 情勢/社会
公明新聞:2015年5月15日(金)付
大型連休の最中、森林公園の木陰のベンチで持参した弁当を広げていると、木の上の方から糸にぶら下がりながら降りてくる一匹の幼虫が目に入った。何の幼虫だろうか。風に揺れながら少しずつ糸を伸ばしている◆地上50センチぐらいの時だろうか、ちょっと強い風が吹き、スッと着地した。そこへ、ご婦人2人組が楽しそうに話しながら歩いてくる。1人の靴が幼虫を踏んだと思った瞬間、わずかにそれて幼虫は命拾いし動き始めた◆ちょうど読んでいた、昭和時代の名優の戦争体験記『南の島に雪が降る』(加東大介著、ちくま文庫)が重なった。「この体験記からは一発の銃声も聞こえてこない。(中略)だがこれほど〈戦争〉を語った体験記はない、戦争の愚かさと非人間性を正直に語り尽くした書はない」(保阪正康氏)といわれる本だ◆そこには、どの戦地に送られるのか、沈没するかもしれない輸送船への乗船......など、自分では選択できないことが生死を分ける不条理な世界があった。そしてまるで虫けらのように扱われる人の命の軽さ◆そんな時代を二度と繰り返してはならない。きょうは、先の大戦で20万人余りの尊い命が奪われた地上戦の戦場・沖縄の復帰記念日だ。沖縄の歴史を決して忘れまい。反戦を固く誓い、平和への決意を新たにしていきたい。(六)