e地方経済の好調 本格的な内需主導で定着を
- 2015.05.18
- 情勢/解説
公明新聞:2015年5月16日(土)付
地方経済に明るさが戻りつつあるようだ。内閣府が発表した4月の景気ウオッチャー調査で、3カ月前と比べた景気の変化を表す現状判断DI(指数)が、3月調査より1.4ポイント改善の53.6となった。好不況の分かれ目となる50を5カ月連続で上回ったことになる。
企業の景況感が改善した背景には、賃上げによる家計支出の増加や株価回復がある。小売業を中心に個人消費の回復が実感として広がった。この傾向が地方で顕著になった点が調査の特徴だ。全国11地域中、沖縄以外の10地域で指数が前月の調査を上回った。特に、北陸地域は3月に開業した新幹線が国内外の観光客数アップの呼び水となり、景況感が全国で最も改善した。
地方経済の明るさを本格化させるには、輸出に加えて国内需要(内需)の盛り上がりが欠かせない。北陸が示すように外国人観光客は、内需を担う貴重な存在である。観光の経済効果を高めるには、再来日する観光客の割合(リピーター率)を上げることが重要だ。中国や欧州の観光客は、再来日に二の足を踏むケースが少なくない。常連の観光客を呼び込むには、観光案内所の多言語対応など利便性向上が必要だ。
ただ、本格的な内需主導を定着させるには、観光客の消費に頼るだけでは物足りない。やはり、国民の消費と企業の投資を活発化することが基本だ。全国で本格化する「プレミアム付き商品券」の利用を、地域経済の新たな好循環のきっかけとしたい。
内需主導の実現には、6月に改定予定の成長戦略が一つの鍵を握る。少子高齢化で国内市場が急速に縮小する中で、政策の選択肢は多くない。
公明党は経済を変革するエンジンとして環境、農業に加えて、医療や介護、教育などの分野を生かす産業構造の転換策が必要だと主張している。医療や介護は営利目的にはなじまないとの議論もあろうが、高齢者は2025年に約3700万人に達し、介護市場は100兆円規模に拡大する。高まる介護サービス需要を経済成長に生かす視点が必要ではないだろうか。
政府は、中長期的な展望も踏まえた地方経済の活性化策を進めてほしい。