e科学技術外交 知的リーダーシップ発揮せよ

  • 2015.05.20
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年5月20日(水)付



世界が直面する共通の課題を解決するためのルール作りには、何が必要か。国際制度についての研究で有名な、米カリフォルニア大学サンタバーバラ校のオラン・ヤング教授は「知的リーダーシップ」を、その一つに挙げている。問題の深刻さを各国に理解させて、解決の方向性を示すリーダーシップである。


同教授によると、知的リーダーシップを発揮する力の源泉となるのが、信頼性の高い科学的な専門知識である。


外務省の「科学技術外交のあり方に関する有識者懇談会」は8日、科学技術を積極的に外交に活用するよう提言する報告書をまとめた。


地球温暖化の進行を示す北極圏での解氷や海面水温の上昇、エボラ出血熱などの感染症対策、宇宙空間の平和利用など、今や、科学的な知見なくして外交的な課題を議論することはできない。先進7カ国(G7)科学技術大臣会合や、経済協力開発機構(OECD)科学技術政策委員会会合をはじめ、各国の科学技術顧問が集まる国際会議も増加している。


国連も、水や食料不足、気候変動などの問題への取り組みに、最新の科学的な専門知識を生かすことを目的とした「科学諮問委員会」を2014年に設立した。


しかし日本は、科学技術を外交に活用するという視点が乏しく、こうした国際会議で存在感を示せていない。


そのため同報告書は、科学的な知見が求められる分野の学識経験者を「科学技術顧問」として、外相の下に設置すべきだと提言している。


日本の科学技術に対する国際社会の期待は非常に高い。外務省が実施した「東南アジア諸国連合(ASEAN)における対日世論調査(13年度)」によると、「日本についてもっと知りたい分野」の1位が科学技術である。


日本は、科学技術を外交の新機軸に位置付けることで知的リーダーシップを発揮し、国際社会をリードする役割を果たすべきである。


公明党も13年に、科学技術顧問を明確な法的位置付けで配置するよう政府に申し入れている。科学的・技術的な裏付けに基づく、説得力のある外交政策を進めることができる体制整備を急いでほしい。

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