e世論調査の課題 熟慮から程遠い回答の場合も

  • 2015.05.21
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年5月21日(木)付



7日の英総選挙では、事前の世論調査が大きく外れた。保守、労働の二大政党は全く互角で大接戦、ともに過半数を得ることはできない、と報道されていたが、保守党が単独過半数を獲得した。英国世論調査協会が原因究明に乗り出す騒ぎになっている。


17日の大阪都構想の住民投票では、事前の世論調査で「反対50%、賛成34%」など、反対が賛成を大きく上回っていると報道されたが、結果は、「反対」が1万票あまり上回っただけ。得票率で約0.8ポイントの僅差だった。


英総選挙の場合、世論調査報道が実際の有権者の投票行動に影響を与えた可能性がある。世論調査結果を見て、スコットランド民族党と労働党の連携を避けたい有権者が保守党支持に回ったとみられている。保守党多数が最初から予想されていれば、ブレーキ役として自由民主党への支持も高まったかもしれない。


各種選挙では、投票直前まで態度が決まらない人は少なくない。投票日まで揺れ動く有権者の投票行動を調査することは難しい。


現在、世論調査ではコンピューターで無作為に発生させた電話番号に電話をかけるRDD方式が主流である。この方式では対象が固定電話の利用者に限られ、調査に偏りが出ることが知られている。


電話調査では、矢継ぎ早に質問が発せられ、熟慮の余地なく、印象や直感で回答することは珍しくない。市民の声を聞く上で、世論調査が重要であることはいうまでもないが、十分な情報や検討がない回答者からの"返事"が集計されているとも言える。


先ごろ実施されたNHKの世論調査では、平和安全法制の関連法案を夏までに成立させることについて、90%が賛否を回答したものの、内容については「あまり理解していない」が40%、「全く理解していない」が9%に上った。内容を十分理解しないまま回答している人が少なくないようである。


マスコミにとって、世論調査は、紹介するだけで価値があり、取材も不要であることから、「安易な記事づくりにつながっている」との批判は根強い。読者、視聴者は、回答の質や調査の限界に十分注意が必要であろう。

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