e平和安全法制 識者に聞く

  • 2015.05.25
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年5月25日(月)付



東京財団上席研究員

渡部 恒雄 氏



憲法9条の精神

「専守防衛」の理念を堅持



公明主張で「歯止め」明確に


―「平和安全法制」の関連法案をどう見ますか。


日本の主な安全保障関連の法律は冷戦期に対応して作られたものだ。現在の国際環境に適応しておらず、何かあった場合に機能するか不安な点が多かった。法案はこうした矛盾を解消し、日本の防衛や地域の安定に責任ある形で取り組むことを明確にした。歴史的にも重要で画期的だと評価する。


日本は米国と安保条約を結んで久しいが、安保条約は今、災害支援を含め、アジア太平洋地域の安定に寄与する"公共財"の役割を担っている。今回の法整備で、日米同盟を基軸に幅広い国際貢献も可能になる。


一方で「米国の戦争に巻き込まれる」との批判があるが、日本は国として主体性を持って判断するし、できないことが明確に存在する。米軍と一緒に特定の国を攻撃することなど一切なく、そうした発想は誤りだ。


―公明党が果たした役割については。

全ての法案が「専守防衛以上のことはしない」という憲法9条の精神に貫かれている。憲法の理念を堅持したのが公明党だ。その役割は、安心を与えるという意味である「リアシュアランス」の観点から、二つの大きな意義があった。



一つが、国民の心配を取り除くという点。さらに重要なのが、周辺国の懸念を払拭する役目だ。かつて日本の軍国主義の被害に遭った国が、今回の安保法制見直しを警戒するのは当然だ。


公明党は、日本が法律を変えても周辺国の脅威にはならず、むしろ国際社会の安定に寄与するために積極的に貢献するという立ち位置を鮮明にさせた。厳しい現実を見据え、「本当の平和の党」へと進化した。


特に中国や韓国にとって、歴史的に深いつながりと信頼関係を持つ公明党が連立政権にいる安心感は計り知れない。公明党は引き続き外交努力を続けてほしい。


―公明党の主張で、自衛の措置の新3要件が法案に全て明記されました。


新3要件が「緩すぎる」と言う人がいるが、とんでもない。きつく縛りすぎると日本が危機に瀕した際に必要な措置が迅速に取れず、手遅れになりかねない。


かといって緩いと恣意的な判断が可能になってしまう。新3要件は従来の3要件をより厳しくしつつ、日本に対する武力攻撃が発生したり、日本と密接な関係にある他国に武力攻撃が発生したときに国民を守るために、ちょうど良いバランスを持つものになった。


―「戦争立法」との批判が一部にあります。


自衛のための武力の行使を憲法9条は否定していない。ここで言う"戦争"が自衛のためではない武力行使を意味しているのであれば、「戦争立法」との表現は誤解を招く。今回はあくまで専守防衛を堅持したものだ。不安を煽る極論こそ、周辺国や国際社会の誤解を招き、国益を損なう。


自衛隊の海外派遣に関しては、相当な歯止めで制限を加えている。今回はあくまで、これ以上しないという枠組みを決めたもので、実際に何を行うかは政治が判断する。その点、国会の関与も公明党の主張で明確になった。


日本が世界で最も軍事力に抑制的な法律を持つ国なのは変わらない。侵略戦争や、世界中に自衛隊が海外派遣される想定自体がオーバーな話で、そもそも自衛隊にその能力はない。

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