e社会資本整備 公共と民間の連携が必要に

  • 2015.05.27
  • 情勢/経済

公明新聞:2015年5月27日(水)付



政府の経済財政諮問会議が、財政の無駄を省き、暮らしの質を高める公共サービスのあり方を検討している。示された改善案の一つが、民間企業に病院や上下水道などの社会資本に投資してもらう「プライベート・ファイナンス・イニシアチブ(PFI)」の導入拡大だ。


今年度の公共事業費は、6兆円で全予算の6%を占める。歳出削減策の取り組みで、新規の社会資本整備に回る事業費は減少傾向にある。しかし、国の試算では2030年ごろに老朽化する社会資本の維持管理に今年度の事業費と同額の6兆円が必要という。人口減少で長期的な税収の低下が見込まれているが、日常生活を支える社会基盤の長寿命化に必要な予算の削減は難しい。また、産業の国際競争力向上に不可欠な港湾や空港の機能拡充も喫緊の課題だ。


公明党も推進するPFIは、厳しい財政状況を考慮すれば、国民生活に必要な公共サービスを維持するための資金繰りの一助となることは間違いない。日本銀行の統計によると、民間企業は1000兆円を超す金融資産を保有している。また、PFI事業に対する民間企業の関心は高い。


だが、昨年度までのPFI事業の実施額は累計で4兆5000億円程度であり、期待されたほど伸びていない。その原因の一つとして考えられるのが「事業の増加が、補助金や地方交付税の減額につながるのではないか」との懸念が一部の自治体にある点だ。


経済財政諮問会議は「中核市」に位置付けられる人口20万人以上の自治体に、PFI導入の原則化を打ち出しているが、導入拡大がなぜ必要なのか、より丁寧に説明するべきだろう。一方、行政は効率性を無視した"役所仕事"を改め、住民重視の公共サービス実現に努力する姿勢が重要だ。


「民間企業の利益優先的な事業経営は公共分野と相いれない」との声も聞かれるが、民間の知恵と工夫がPFIを通じて新産業を創出する可能性は小さくない。事実、PFI先進国の英国は、公共と民間の連携で雇用創出や地方経済の振興を実現している。


従来の考え方にとらわれない公共サービスのあり方が問われているのではないか。

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