e派遣法改正案 ここがポイント<下>
- 2015.05.28
- 情勢/社会
公明新聞:2015年5月28日(木)付
労働者守る義務の実効性は?
事業を許可制にして厳格運用
Q 同じ職場で働ける期間の上限3年に達する派遣労働者に派遣元(派遣会社)が次の就労先を確保するなどの雇用安定措置や、キャリア形成支援が新たに義務化されますが、実効性がなければ意味がありません。
A 現在は4分の3以上が届け出制の派遣事業を全て許可制にします。その上で、キャリア形成支援制度があることを許可・更新の要件に追加。教育訓練の実施に関する事業報告も求めます。義務違反に対しては、許可の取り消しも含めて行政が厳しく指導します。
Q 派遣元が雇用安定措置の義務を避けるために、契約を3年未満にする恐れがあります。
A 厚生労働省は、悪質なケースがあれば重点的な指導監督の対象とする方針を示しています。なお、派遣労働者が同じ職場で1年以上働いていれば、派遣元には雇用安定措置を講じる努力義務が課されます。
Q 派遣労働者の正社員化に向けて、派遣先への具体的な支援も必要です。
A 今年度予算で「キャリアアップ助成金」が拡充されました。ケースごとに支給額は異なりますが、派遣先が中小企業で、有期雇用の派遣労働者を正規雇用した場合は、1人当たりの支給額が60万円から80万円に引き上げられています。
待遇改善は進むの?
賃金などで具体的配慮求める
Q 法改正で派遣労働者の待遇改善は進みますか。
A 派遣元に対し、派遣労働者の賃金などで、派遣先の労働者とのバランスが取れた待遇が確保されているかどうかについて、本人の求めに応じて説明する義務を新設します。
一方、派遣先には▽自社の労働者の賃金などに関する情報の派遣元への提供▽業務に関連した教育訓練の派遣労働者への実施▽休憩室などの福利厚生施設の利用―について、具体的な配慮を義務付けます。
Q 雇用形態にかかわらず、同一の労働に対し同一の賃金を保障する「均等待遇」を推進するべきでは。
A 現在の日本は、仕事内容に応じた賃金を支払う「職務給」ではなく、仕事で培った能力や勤続年数などの経験に応じた賃金を支払う「職能給」が慣行となっています。このため政府は、正社員と派遣労働者の仕事や責任の違いを考慮し、バランスの取れた待遇を確保する「均衡待遇」をまずは進めるとしています。
その上で、改正案には公明党の要請で、付則に「均等・均衡待遇のあり方を検討するため、調査研究などの措置を講じる」との規定が盛り込まれました。付則を踏まえ、政府は諸外国の均等待遇の制度や運用状況などを調べる方針です。