e平和安全法制 識者に聞く

  • 2015.05.28
  • 情勢/国際

公明新聞:2015年5月28日(木)付



国民守る隙間ない体制

丁寧できめ細かい議論期待
同志社大学 村田 晃嗣 教授



―「平和安全法制」の必要性についてどう考えますか。


冷戦終焉後、日本を取り巻くアジア太平洋地域の安全保障環境は激変している。


科学技術の発展に伴い、核兵器の拡散が懸念されるなど、安全保障を地理的に捉える発想が難しくなってきた。従来のような国家対国家の戦争だけでなく、「イスラム国」のような非国家勢力が伸長し、国際政治でマイナスに働いている現実もある。加えて、日本自体が人口減少など深刻な課題をいくつも抱え、国力の相対的な低下が懸念される中、周辺諸国の台頭など東アジア地域のパワーバランスも大きく変わりつつある。


そうした情勢に対応する意味で、今回の法整備の必要性は十分にあると考える。これまでの安保関連の法制度はパッチワーク(継ぎはぎ)的な面が否めなかったが、今回、国際環境の変化に迅速かつ的確に対応できるよう、枠組みの整備が大きく進んだ。国民を守る隙間のない安保体制を構築する上で、大変に意義のあることだ。日本の安全保障を高めることは結局、国際社会全体の平和にもつながる。



―公明党の果たした「歯止め」については。


有権者や世論にとって、新しい法制ができた時、日本の安保政策がどうなるのか、不安を抱くのは間違いない。その不安に対し安心を与えるという意味で、公明党の主張で実現した、自衛の措置の新3要件や自衛隊の海外派遣3原則の「歯止め」は、高く評価できる。より多くの国民が納得し、法整備を支持できるのであれば、大いに意味がある。



―野党や一部マスコミは「戦争法案」などと激しく批判しています。


議論の前提条件として、自衛隊の持つ装備や人員、予算、能力には限界があり、大規模な軍事作戦を行うことは現実的に不可能だ。米国も日本の能力を熟知している。日本の国民が納得しないような危険な地域に、米国が一度でも日本を連れ込もうものなら、日本の世論は混乱を来し、日本の協力が本当に必要な時に期待できなくなってしまう。「日本が他国で戦争できる国になる」という批判は過慮(思い込み過ぎ)であろう。


批判するなら、具体的な政策論をお願いしたい。法制度にレッテルを張り、イメージで批判するのは、昔なら通用したかもしれないが、国民はこのような手法では動かない。精緻な政策論を交わすことが、与党側にとっても国民への丁寧な説明につながる。



―国会論戦に対する公明党への期待は。


今回の法整備をめぐる動きについて「よく分からない」と思っている国民は、まだまだ多いと思う。公明党には、丁寧できめ細かい議論をリードしてもらい、与党内でも自民党とは違う存在感を発揮してほしい。さらに、重要な政治課題であるからこそ、公明党が与野党のブリッジ(橋渡し)役として、あるいは政府と世論とのブリッジ役を果たしていくことが重要だ。


安全保障の問題は、国の存立、われわれの生命・財産に関わり、日本の国際社会の評価にも影響する。どんなに議論しても「もう十分だ」ということはない。誠実な議論を積み重ねていってほしい。

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