e平和安全法制北側副代表の質問(要旨)
- 2015.05.29
- 政治/国会
公明新聞:2015年5月29日(金)付
28日の衆院平和安全法制特別委員会で行われた公明党の北側一雄副代表の質問と、安倍晋三首相ら政府側答弁の要旨をまとめた。
国民の命守る法制整備
日米防衛協力の実効性高める
北側一雄副代表 今回の平和安全法制の全体像について、パネルを用意【別掲参照】した。
まず、上段のわが国防衛に関わる所だが、左の方は事態の深刻度が比較的低い状況、平時でありグレーゾーンの場合。この場合に今回、自衛隊法を改正して米軍等の部隊の武器等防護もできるようにする。自衛隊と連携してわが国の防衛に資する活動に現に従事しているような米軍等の部隊の武器等防護ができるようにしていこうという規定である。
さらに右へ行くと重要影響事態法。周辺事態法の改正だ。日本の平和と安全に重要な影響を与える事態に際し、米軍等への後方支援活動を実施するという法律だ。さらに右へいくと、これは有事であり、武力攻撃事態対処法と自衛隊法の改正によって、武力攻撃事態、また今回新たに加わった存立危機事態の対処について規定している。
下段の国際社会の安全と国際協力の場面では、国連平和維持活動(PKO)法を改正する。内容は、業務を拡大し、安全確保業務等ができるようにする。さらにはPKO類似の活動についてもPKO参加5原則と同じ厳格な条件の下で、協力できるようにする。
さらに右に行くと、これは国際平和支援法。従来、特措法で対処していたところを新しい法律をつくり、国際社会の平和と安全のために活動を行う外国軍隊への協力支援活動を実施する内容になっている。
この全体像を踏まえた上で質問したい。まずこの安全保障法制、今回、なぜ今整備をしようとしているのか。
私なりに、目的・必要性について認識を少し話したい。今回の法整備の目的の大きな一つは、わが国防衛のための日米防衛協力体制の信頼性、実効性を高め強化することに眼目があるのだろうと思う。
平時から有事に至るまで切れ目のない法制を整備することによって、日頃から日米間の連携や協力が、緊密にできるようになる。また、さまざまな想定のもとで平時から共同訓練ができるようになる。私はここが大事だと思う。
そもそも有事のような危機的な状況など作ってはならないわけであり、切れ目のない法制を整備することによって、日頃から備えを十分にし、万全を期していくことができる。結果として抑止力を高めて紛争を未然に防止できる。
もう一つ、下段の国際社会の安全に掛かるところだが、国際社会の平和・安全があってこそ、わが国の平和・繁栄が維持できる。だから決して国際協力と言っても何かどこかの他の国のためにやるというだけではなく、結果として、わが国の安定とかそのために貢献をすることになるわけであり、できる限りの貢献はしていかねばならない。
これまで、日本は国際協力の場面で20年あまりそうした活動を自衛隊の皆さんに頑張ってきていただいた。経験とか実績を踏まえ、国際平和協力のための法制をあらためて整備をしていこうというところに狙いがある。首相の認識をあらためて聞きたい。
安倍晋三首相 まさにこの法制は、国民の命と幸せな暮らしを守ることが、ただ一点の目的である。
そこで、日本の安全については、今委員が指摘したように、自衛隊とそして米軍が、わが国の存立が脅かされるような事態においてしっかりと共同で対処していくわけだが、その上において自衛隊も持てる力を十分に発揮できるように今後はなっていく。
この協力というのは当然絆を強くしていく。お互いが助け合うことができる。これは大きな変化になっていく。変化が起こっていく中において日米同盟が完全に機能するという発信につながり、結果として武力行使をしなくて済む、海外から侵略されなくて済む、未然に紛争を防ぐことにつながっていくことになる。
国際社会の安全においても、日本は多くの生活必需品を海外から輸入している。こうした国際社会を平和にしていくことは国際社会の一員としての義務である。われわれはこの法整備をしっかりと進めていきたい。
自衛隊海外派遣 公明が3原則を主張
首相 「外交努力尽くし慎重判断」
北側 今回の安全保障法制の整備、私は、安全保障においては、原理、原則、視点、この三つがあると思っている。
原理とは、憲法適合性のこと。憲法9条、また憲法13条との適合性を当然持たなければならない。
憲法9条は、武力による威嚇または武力の行使をしてはならないと規定する。一方で憲法13条は、国民の生命、自由、幸福追求の権利は国政上、最大の尊重を要すると規定する。その13条から自衛の措置が認められる。
その自衛の措置の限界を示したのが、昨年7月1日の閣議決定の新3要件だ。
この憲法適合性があるからといって、自衛隊を、憲法に適合すれば全て派遣するということではない。
次は法制度。自衛隊という実力組織を出す以上は、そこに法律上のできるだけ明確な根拠がないといけない。今回の安保法制もここの部分の整備だ。
この法制度をつくるに当たっては、やはり原則があるということで、自衛隊の海外派遣3原則ということを主張した。この自衛隊海外派遣の3原則というのは、当然の話だが、1番目に国際法上の正当性の確保、2番目に国会の関与など民主的統制、3番目に自衛隊の安全確保。この3原則を、個々の法制の中でそれぞれについて具体的に法制化をしようと提案させていただいた。
では、制度があって、要件が満たされれば必ず派遣するのかといえば、これまたそうではない。その時々の政策判断がある。その判断は、その時の内閣、国会が行う。制度ができたからといって、要件に当てはまれば必ず自衛隊を派遣するということでは決してない。
憲法に適合しているか、そして法制、そして制度があったとしても政策判断が必要。この三つの段階があると思う。
三つ目の政策判断にも私は一定の視点があると思う。
第1に、わが国の主体的判断だということ。よく批判として、アメリカの要請があれば断れないのではないか、だとか、アメリカから言われれば地球上どこでも後方支援するとか、こうした批判がある。しかし、ここはあくまでわが国の主体的判断。わが国の国益にとって、どうなのかという判断があり、またその時の国際情勢がどうなのか、その事態に国際社会はどう対処しようとしているのか、わが国はどういう役割を果たしていくのがいいのか。こういう判断をしないといけない。
また当然のこととして、国内の世論の支持がなければ自衛隊の派遣なんかできない。それらを考慮して国が主体的に判断をしていくということだ。
第2に自衛隊にふさわしい役割がある。自衛隊の能力、人員、装備、これまでの経験・実績。そういうものを踏まえて、自衛隊にふさわしい役割がある。自衛隊の得意分野もある。さらに予算面でも制約がある。自衛隊にふさわしい役割が何なのかということも、当然、時の内閣、国会は検討しないといけない。
第3に平和外交努力だ。平和外交努力と今回の安保法制整備は目的が一緒だ。紛争を未然に防止する。また紛争があるならば、それを拡大させない。平和外交努力と安保法制整備による抑止力の強化が相まって紛争の未然防止につながってくる。非軍事分野での貢献活動も日本はしっかりやっている。そうした貢献活動についてはどうなのかと、こうしたことを考えて政策判断をしていくことになるだろうと思う。
首相 法律をつくったとしても、これはやらなければならないということではもちろんない。できるというだけで、その上に立って、慎重な慎重な政策判断がある。
このいわば3段階になっているということは、はっきりとさせておく必要がある。残念ながらこれが混同された議論が横行しているわけで、法理上は、これはでき得るという答弁をすると、いきなりそれをやるのだと(報道の)紙面に踊る場合があるわけだが、そもそも能力も想定もしていないことは、これは起こり得ないわけだ。
そこで第1に、憲法適合性に関しては、自衛隊の活動が武力の行使との一体化を防ぐ仕組みなどにより、武力による威嚇または武力の行使に当たらないことを確保している。その例外は、新3要件を満たす場合の自衛の措置に限られる。
そして第2に、自衛隊の海外派遣に当たっては、国際法上の正当性の確保、国会の関与等の民主的統制の確保、自衛隊員の安全確保のための措置、これは"北側3原則"といわれているものだが、平和安全法制において、法律上の要件として明確に定めているところだ。
第3に、この法制に基づいて、自衛隊が実際に活動を行う場合には、まずわが国の主体的判断の下、自衛隊の能力、装備、経験に根差した自衛隊にふさわしい役割を果たすが、その前提として外交努力を尽くすことを重要な視点として政策判断をする。この3点を基本的な判断基準としていきたい。
新3要件は「自国防衛」
北側 新3要件について議論したい。憲法9条の下で許容される自衛の措置に関する新3要件だ。この3要件は、今回の法制の中で自衛隊法と武力攻撃事態対処法の二つの法制の中で全て明記されている。
まず第1要件の中の「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」を存立危機事態と定義した。
その判断基準は何か。首相や内閣法制局長官の答弁では、この「明白な危険」について、「そのままでは国民に、わが国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻重大な被害が及ぶことが明らかな状況であるということ」と解釈された。ではその判断の要素は何か。
事態の個別具体的な状況に即して五つ要素を挙げている。1番目に「主に攻撃国の意思、能力」、2番目に「事態の発生場所」、3番目に「その規模、態様、推移」などの要素を総合的に考慮し、4番目に「わが国に戦禍が及ぶ蓋然性」、5番目に「国民が被ることになる犠牲の深刻性、重大性」などから客観的、合理的に判断すると答弁されている。
さらに「明白な危険」というのは、単なる主観的な判断や推測等ではなく、「客観的かつ合理的に疑いなく認められるというものである」。このような答弁を昨年の7月14日以来、首相も、長官もずっと同じ答弁をしている。
次に第2要件。「これを排除し、わが国の存立を全うし国民を守るために他に適当な手段がないとき」との文言が新たに加わった。これが大変意味が重いと私は思っている。
これまでは「これを排除し、他に適当な手段がないとき」だった。要するに「自国防衛のためですよ」ということをあらためて言っている。この第2要件も法文に明記された。
この第2要件の意義についても昨年の予算委員会で政府答弁がある。「他国に対する武力攻撃の発生を契機とする武力の行使についても、あくまでもわが国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置に限られ、当該他国に対する武力攻撃の排除それ自体を目的とするものではない」ということを明らかにしている。
そして最近議論になっているのが「必要最小限度の実力を行使する」という第3要件。海外派兵の一般的な禁止の論点に絡んで議論されている。
この第3要件は普通、均衡性をいっているといわれる。個別的自衛権でいうと、わが国に対する武力攻撃があった。その武力攻撃を排除するための実力行使。これがバランスを持たなければいけませんよ、という意味で理解されている。
しかし、この「必要最小限度」というのは、第1要件、第2要件を受けた「必要最小限度」だ。要するに「わが国の存立を全うし国民を守るための必要最小限度」ということ。ここが一番のポイントだ。
法制局長官にあらためて答弁を求めたい。
横畠裕介内閣法制局長官 第3要件は、憲法上の武力行使の要件である新3要件の第1要件および第2要件を満たした場合における、実際の実力行使の手段、態様、及び程度の要件である。従って第3要件でいう「必要最小限度」とは、「わが国の存立を全うし、国民を守るため」とある第2要件を前提とした、「わが国を防衛するための必要最小限度」ということであると理解される。
北側 「必要最小限度」というのは目的から照らして、自国防衛のため、国民の権利を守るため、国の存立を守るための「必要最小限度」という意味だと私は理解している。長官、今の理解でよろしいか。
法制局長官 ご指摘の通り。
北側 日本という国はこれまで戦後70年間、平和国家の道を歩んできた。専守防衛という理念を堅持してきた。私は今回の法制によっても、またこの新3要件によっても、専守防衛というわが国の大事な理念はこれからも堅持されているんだということを、ぜひもう一度首相の口から答えていただきたい。
首相 今般の平和安全法制の整備に当たっては、昭和47年(1972年)に示された政府見解の基本的な論理は一切、変更していない。
憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略である専守防衛について、その定義、そしてそれが、わが国防衛の基本方針であることに、いささかの変更もないということは、はっきりと申し上げておきたい。
重要影響事態 日本攻撃と同様の事態
北側 後方支援活動について聞く。重要影響事態法、国際平和支援法。これは後方支援に関わる所の法制だ。
重要影響事態とは何か。
今回、この法文をつくるに当たり、与党内でも相当議論をした。この重要影響事態法に書いてある通り、「そのまま放置すれば、わが国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態など」ということで例示規定を残した。
この例示は単なる例示じゃない。やはりこうした例示と同等のもの、また匹敵するもの、こういうものの一つの例示として挙げていると理解するがどうか。
法制局長官 周辺事態法第1条の「そのまま放置すれば、わが国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等」は、周辺事態、すなわち同条に規定されている、わが国の平和と安全に重要な影響を与える事態がどのような事態であるのか、どのような事態を法律が想定しているのかの理解を助けるために代表的な具体的事態を例示したものであると考えられる。
改正後の重要影響事態においても、同じ例示をそのまま維持しているところであり、その意味においては変わりがないものと理解される。
北側 法制上はこの例示は単なる例示だけの意味ではなく、やはり「わが国の平和と安全に重要な影響を与える事態」とは何なのかということを考える時の一つの大事な要素になっている。
だから「わが国の平和と安全に重要な影響を与える事態」というのが際限なく広がってしまうということにはならないんだと理解している。この重要影響事態とは、どういう基準で判断をしていくのか。
首相 いかなる事態が重要影響事態に該当するかについては、事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合して、客観的かつ合理的に判断することとなるわけで、一概に述べることは困難ではある。が、その判断要素について、より具体的に申し上げれば、実際に武力紛争が発生し、または差し迫っている等の場合において、事態の個別具体的な状況に即して主に、当事者の意思、能力、そして事態の発生場所、また事態の規模、態様、推移をはじめ、当該事態に対処する日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行う米軍、その他の外国の軍隊等が行っている活動の内容等の要素を総合的に考慮して、そして、わが国に戦禍が及ぶ可能性、国民に及ぶ被害等の影響の重要性等から客観的、合理的に判断することとなると考えている。
国際平和支援 国連決議あれば実施
北側 新法の国際平和支援法において、どんな事態に際してわが国が後方支援をしていくのかということで、国際平和共同対処事態という定義をしている。
この国際平和共同対処事態は、第1条で「国際社会の平和及び安全を脅かす事態」これが1番目。そして、「その脅威を除去するために国際社会が国際連合憲章の目的に従い共同して対処する活動を行い」これが2番目。3番目に「わが国が国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要がある」。この3要素、要件の下で事態認定をしていくという構成になっている。
具体的には国際法上の正当性という観点から、国連決議があることを絶対条件にした。さらに国会の関与では、例外なき国会の事前承認と非常に厳しい縛りを掛けている。
首相 国際平和支援法においては、国際法上の正当性の確保について、わが国が協力支援活動等の対応措置を実施するのは、その措置が国際法上適法なものであることに加えて、わが国が支援する諸外国の軍隊等の活動を当該外国が行うことを決定する国連決議や、問題となる事態に関連して国連加盟国の取り組みを求める国連決議がある場合のみとしている。
また、自衛隊を海外に派遣するための一般法であることに鑑みて、国民の理解を十分に得つつ、民主的統制を確保する観点から、例外なく国会の事前承認を必要としている。
北側 武力行使との一体化について、後方支援は武力の行使ではないことを大前提にしてやる。だから一体化してもならない。
そもそも、輸送活動とか、補給活動とか、こうした後方支援活動というのは安全な場所でなければできないわけで、安全な場所を確保していくのは当然の話だと思う。今回、防衛相は自衛隊の部隊が円滑かつ安全に実施することができるよう実施区域を指定すると、法文上書いてある。これまでの答弁を聞いていると、これがさらに具体化されている。あらためて答弁をお願いしたい。
首相 今現在、戦闘行為が行われていないというだけではなく、部隊等が現実に活動を行う期間について戦闘行為がないと見込まれる場所を実施区域に指定することとなる。
北側 今回の閣議決定後の首相会見で、「イスラム国」への空爆作戦、後方支援をすることはないという趣旨の発言があった。この発言の思いをあらためて聞きたいと思う。
首相 わが国は政策判断として今後も軍事的作戦を行う有志連合に参加する考えはない。「イスラム国」への空爆等への後方支援を行うことは全く考えていないということははっきりこの場でも申しておきたいと思う。
わが国は今後とも、評価をされている難民、避難民に対する食料・人道支援など、わが国ならではの人道支援を拡充し、そして非軍事分野において、国際社会におけるわが国の責任を毅然として果たしていく。