e日本製品の軍事転用 不正輸出防止へ企業支援を
- 2015.05.29
- 情勢/国際
公明新聞:2015年5月29日(金)付
兵庫県芦屋市にある貿易会社の会長らが26日、中東やアフリカなどの国々の軍事関連企業とも取り引きしている中国の企業に、日本製の炭素繊維を不正に輸出していた疑いで逮捕された。
炭素繊維は、鉄の4分の1の軽さで10倍以上の強度を持つ革新的な素材として注目されている。1971年に、日本の企業が世界で初めて生産を開始した。ゴルフクラブやテニスのラケット、自転車などの身近な製品にも使われている。
ただ同時に、核兵器開発に必要なウランの濃縮を行う遠心分離機の製造や、ミサイル開発などにも転用できるため、外国為替及び外国貿易法(外為法)で輸出が厳しく規制されている。
炭素繊維の不正輸出での検挙は今回が初めてというが、高度な技術を持つ日本企業の製品が、他国で兵器開発に使われる事態が起きないよう、規制を徹底すべきだ。
警察白書(2014年)によると、核兵器などの開発に使用できる物資の不正輸出による検挙が30件あったという(02年から13年末まで)。日本企業は、輸出時に軍事と無関係であっても、いつの間にか他国の兵器開発に関与してしまう危険性があることに、十分に注意してもらいたい。
03年末から04年初めにかけてリビアの核開発関連施設を査察していた国際原子力機関(IAEA)が発見したのは、日本製の3次元測定機だった。物の一辺、奥行き、高さを同時に測定する機器で、自動車のエンジンなどをつくるのに使われるが、遠心分離機の製造にも使用可能である。
日本企業が、自動車部品や精密機械を扱うマレーシアの企業に輸出したものが、リビアに流出していた。民間用の取り引きであっても、安心できない。
外為法のルールを守るための体制を整備している企業は、現在、約600社ある(経産省公表)。不正輸出の防止は、企業の自主努力に大きく依存しているが、企業だけで軍事に関連する他国の企業を把握するのは難しい。政府が、兵器開発に関わっている懸念のある組織などの情報提供を積極的に進め、不正輸出を防ぐ企業の努力を後押ししてほしい。