eコラム「北斗七星」
- 2015.05.30
- 情勢/社会
公明新聞:2015年5月30日(土)付
「ダイオウグソクムシ」という生き物をご存じだろうか。ムシと名の付くくらいだから、昆虫かと思いきや、そうではない。水深200メートルから1000メートルの海底に生息する深海生物だ◆京都水族館で以前、飼育されていたころ、見学したことがある。巨大なダンゴムシのような体型。体重は1キロを超える。海底に沈む魚の死骸などを食べていることから、"海の掃除屋"の異名が。鳥羽水族館では5年間、何も食べずに生きていた記録もある◆ところが最近、このダイオウグソクムシに"異変"が見られると聞いた。胃からプラスチック材のビニールや、ゴムといった人工物が発見されるケースが相次いでいるのだ。国内でも1都2県の水族館が捕獲・飼育していたダイオウグソクムシで確認されている◆実際、プラスチック類に限っても、海に漂うごみの量は極めて多い。米科学誌・サイエンスによれば、数百万トンが既に流出し、その99%が行方知れず。海底に沈んで堆積するか、波で砕かれたものを生物が飲み込み、食物連鎖が起こっている可能性もあるという◆環境省は実質、今年度から28億円を投じて漂流・漂着・海底ごみの回収事業等への支援を開始。既に「21都府県で始まっている」(同省)。"海の掃除屋"が暗示する危うい事態。各国の対策強化とともに、身近なところから減らす努力が必要だ。(田)