e国際サッカー連盟汚職 ファンの期待に応える改革を
- 2015.06.01
- 情勢/解説
公明新聞:2015年6月1日(月)付
一発退場は、ゲームだけで十分だ。米司法省が、国際サッカー連盟(FIFA)幹部と関係者ら14人を、組織的な違法行為と贈収賄の罪で起訴した。
スイス当局が米国の要請を受け、起訴された現職の副会長2人を含む幹部7人を逮捕したとされ、事態は国際犯罪の様相をみせている。
司法省の起訴状によると、FIFA幹部に対して1991年からの24年間で企業側から約185億円以上もの巨額な賄賂が渡った。国際大会のテレビ放映権やスポンサー(出資者)の権利を企業に与える見返りだったとみられる。
リンチ米司法長官は会見で「米国は腐敗を一掃する決意だ」と語気を強めた。賄賂を隠す不正な金融操作であるマネー・ロンダリング(資金洗浄)に、米国内の金融機関が使われたとされる。事実なら米国金融の信頼を揺るがす問題であり、司法省が無視できないのは当然だ。
渦中の5月29日に実施された会長選では、ブラッター会長が辛くも5選を果たした。同会長は事件に関して「全関係者の監視はできない」と釈明したが、選手を含む全関係者の順守が求められるFIFA倫理規定の形骸化を図らずも浮き彫りにしたといえよう。
ファンの応援で成り立つプロスポーツの組織は、正当な運営ルールが行われているかどうか厳しく問われる。地球上で最も人気ある競技と称されるサッカーは、全世界で年間4兆円以上の巨大市場だ。FIFAはサッカーの価値と品位を守る重責を忘れてはならない。
行き過ぎた商業主義が腐敗の温床になったとの指摘は重い。地に落ちたFIFAの名誉回復は容易ではないだろうが、徹底した組織改革の断行で、ファンの期待に再び応えてほしい。
夢と感動を与えるスポーツ界にとっても、今回の事件は無視できない不祥事となった。日本は5年後に東京五輪・パラリンピックの開催を控える。国民の地道な努力で勝ち取った世界最大規模のスポーツの祭典だ。名実ともの成功に向けて、不正は絶対に起こさないとの姿勢で準備を進めていきたい。