eフィンランドの最終処分予定地を視察
- 2015.06.04
- 情勢/国際
公明新聞:2015年6月4日(木)付
放射性廃棄物
未来に責任 国主導の候補地選定が重要
手記 高木陽介経済産業副大臣(公明党)
5月4日、フィンランドの放射性廃棄物の最終処分予定地「オンカロ」を視察した。「オンカロ」とはフィンランド語で「空洞・深い穴」という意味だ。
原発で発生する高レベルの放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の世界初の処分場「オンカロ」はヘルシンキから車で約4時間。エウラヨキ自治体にあるオルキルオト原発の敷地内に建設されている。フィンランドは1979年、原発を初稼働させた。オルキルオトが使用済み核燃料の最終処分地として選ばれたのが2000年。
04年から建設がスタートして10年余。建設作業と並行して、必要な研究開発や地質環境データ収集が行われてきた。建設、運営主体は原発事業者2社が出資したポシヴァ社。
地下450メートルに廃棄物を埋めるため、地上から廃棄物を運び入れるためのトンネルが必要だ。垂直距離で1メートル下がるごとに、10メートルの下り坂のトンネルを掘り進める工事を丁寧に進めてきた。視察では5キロの坑道を車で進んだ。途中で断層の状況や使用済み燃料を置いた場合の坑内の温度変化が地層に及ぼす影響について研究していると聞いた。
最終処分場の建設には地層の研究に加え、高い土木技術が必要だが、日本の高いトンネル掘削技術を活用すれば、安全性がより高まることを感じた。
ポシヴァ社のモッカ社長からは、世界の最先端を進むフィンランドの経験として、特に立地選定の進め方について、辛抱強く地元とコミュニケーションを取ることが重要との示唆があった。地元であるエウラヨキ自治体には、雇用の創出、税収の増加などのメリットがあり、お互いにWin―Win(互恵)の関係が築かれているという。
日本政府は5月22日、核のごみの最終処分に関する新しい基本方針を閣議決定した。自治体が名乗りを上げるのを待つこれまでの公募方式を改め、国が候補地を科学的に示して自治体に協力を申し入れるなど、国主導で処分地選定を進めることになった。
既に原発を持つ日本は、最終処分場を必ず建設しなければならない。原発に対する賛成、反対に関わらず、どうやって最終処分場を造っていくのか与野党を超えて議論を重ね、結論を出すことが重要だ。未来に責任を持つためにも、私たちの世代でこの問題を解決しなくてはならないと痛感した視察だった。