eコラム「北斗七星」

  • 2015.06.10
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年6月10日(水)付



鹿児島・口永良部島の新岳噴火では、避難指示からわずか5時間で、住民らの島外避難が完了した。日常的に、いざという時のための訓練を繰り返していたからだ。その成果が今回発揮された◆昨年8月、34年ぶりに噴火し、新岳の警戒レベルを1から3の入山規制に引き上げて以降、気象庁と町は住民向けの説明会を繰り返す。大規模な避難訓練も実施。島内唯一の小・中学校では、児童生徒を乗せて、すぐ校外に避難できるよう、教員の車は校舎脇に一列で止めていた◆噴火したら避難指示が出ることは、住民には周知済み。これも大きい。日没前の避難完了を念頭に、町長は噴火直後、決断した◆日本は世界でも有数の火山国であるが、観測を含め、口永良部島のような体制が整えられているところは多くない。巨大地震の予知は依然として難しい。となれば、国は防災・減災対策拡充に一層努め、私たちは「正しく恐れる」構えでいたい◆この言葉には淵源がある。1935年の浅間山噴火に出くわした寺田寅彦が、噴火後も何ら気にも留めないでいる登山客と事態を深刻に受け止める地元駅員との様子を対比し、「正当にこわがることはなかなかむつかしい」(寺田寅彦随筆集第五巻)と綴った。この国で暮らす以上、やはり見くびらず、万全の備えで、と受け止めたい。(広)

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