eソーシャル・ビジネス 行政を補完し、経済を活性化

  • 2015.06.17
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年6月17日(水)付



日本政策金融公庫が、社会的事業向け融資を拡大している。同事業は英国を発祥に世界へ広まり、日本では「ソーシャル・ビジネス」と英語名のまま呼ぶのが一般的だ。


ソーシャル・ビジネスの目的はボランティア活動と同様、まちづくりや環境保護活動などの社会的課題の解決に取り組むことだ。ただし、無償の社会貢献活動と違う面がある。活動が収益を伴う事業として実施される点だ。


例えば、地方創生の中核事業である地域活性化や自然環境保護は、成果が表れるまでに長い時間と多額の活動資金を必要とする。無償活動の場合に最も懸念されるのは、資金不足から取り組みが中断することだ。そこで、活動を収益事業とすることで持続可能な社会貢献が可能となり、一定額の資金も確保できる。


同金融公庫のソーシャル・ビジネス向けの融資は、2014年度に6045件、517億円と過去最高となった。これに加えて、地方銀行が事業としての将来性を見込み、独自の融資制度を設けて市場参入する動きも出てきた。


これは、人口減少で経済規模の縮小が避けられない日本にとって重要な動きだ。また、介護や子育て支援、公共交通網の維持などに少ない財源でやりくりする自治体にとっても意味がある。なぜなら、ソーシャル・ビジネスは行政が担いきれない役割を補完し、新たな市場を掘り起こす可能性があるからだ。


日本での市場規模は2400億円を超える程度だが、英国では6兆円産業に達する。収益事業であるため、雇用の創出に貢献できる点も見逃せない。


ソーシャル・ビジネスの普及に向けた課題は、業界の相互連携をどう強化するかだろう。地域密着型の社会貢献事業は、担い手の中心が特定非営利活動法人(NPO法人)や中小零細企業が大半であるため、地域を超えた事業展開に必要な情報や人材が限られる。広域での情報交換や、社会的事業の拡大が求められている中で、地域の実情に精通した金融機関に期待される役割も小さくない。


政府は業界のネットワーク構築を政策的に支援し、将来を見据えた新たな公共サービス像の研究を急ぐべきだ。

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