eコラム「北斗七星」
- 2015.06.19
- 情勢/社会
公明新聞:2015年6月19日(金)付
距離は時間によって定義されている。例えば1メートルの長さは「1秒の2億9979万2458分の1の時間に光が真空中を伝わる距離」と定められているそうだ◆距離と時間の関係は安田正美著『1秒って誰が決めるの?』(ちくまプリマー新書)で知ったが、実は今、日本の標準時を管理する情報通信研究機構が1秒の調整に取り組んでいる。今年は「うるう秒」の年。世界同時に1秒を加えて、地球の自転と原子時計のずれをなくすためだ◆今回は7月1日午前8時59分59秒と9時00分00秒の間に59分60秒が挿入される。前回の2012年の際は、交流サイトのミクシィで約4時間つながりにくくなり、豪州の航空会社の発着便に最大2時間の遅れが生じた。うるう秒に対応しきれなかったためらしい◆1秒といえど、おろそかにできまい。クレア・コック・スターキーの『ビジュアル・ワールドデータ89』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)から算出すると、1秒間で、テニスコート19面超の森林が地球上から消失。41トンの食料が廃棄されている◆片や小学校の道徳では「『ありがとう』。この1秒ほどの短い言葉に、人のやさしさを知ることがある」との小泉吉宏氏の詩を引用していると聞く。1秒が時代を映し、価値を生む。与えられた時間を使わずして、何を価値創造するというのだろう。(田)