e難民・避難民6千万人 戦後最悪、世界規模の対応急げ

  • 2015.06.26
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年6月26日(金)付



この悲惨な現状をどう解すればいいのか。人類の良心が問われている。


紛争や迫害で住む家を追われた人が、過去に例のないスピードで増え、今や6000万人の大台に迫っていることが分かった。


国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の報告書が明らかにしたもので、それによると2014年末時点の世界の難民や避難民の数は戦後最多の5950万人を記録。前年
比で830万人増、この5年間では4倍に膨れ上がったことになり、世界の人口の122人に1人が避難を余儀なくされている計算になる。


背景にあるのは武力紛争の頻発だ。11年に始まったシリア内戦など、世界では過去5年間で15の紛争が勃発・再燃しており、いずれも長期化と泥沼化の様相を呈
している。


グテーレス国連難民高等弁務官が指摘する通り、「世界は紛争阻止に向けて全く一致協力できず、人々の強制移動の規模は拡大し、危機への対応能力は縮小す
るという"先例なき時代"に入った」ことを痛感せずにはおれない。


事実、UNHCR報告は、難民が急増・拡散し続ける一方で、母国へ帰還できた難民は激減の一途を辿り、14年は過去31年間で最低の12万6800人にとどまったことを
明らかにしている。


地中海や紅海では中東・北アフリカからの難民を乗せた密航船の海難事故が相次ぎ、インド洋上では今この瞬間も、ミャンマー出身の少数民族「ロヒンギャ族
」の人々が波間を漂流していることも周知の通りだ。


にもかかわらず、国際社会の人道支援の動きが緩慢なのはどうしたことか。日本は昨年も難民認定数が主要国の中で圧倒的に低い11人にとどまったし、これま
で難民問題をリードしてきた欧州でも、難民の流入阻止を目的に防護柵を設ける国が現れるなど移民政策の後退が目立つ。


明らかなのは、旧来型の難民・避難民対策ではもはや、現下の深刻な状況に対処できないということだろう。世界規模で対応する新しい人道支援の枠組みを、
国際社会は急ぎ構築する必要がある。


叶うなら、「人権・人道立国」の旗印の下、日本がその突破口を切り開きたい。

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