e年金情報の流出問題 被害防止へ加入者に周知さらに
- 2015.07.06
- 情勢/社会
公明新聞:2015年7月4日(土)付
日本年金機構の職員のパソコンがウイルスに感染し、基礎年金番号や住所など約101万人分の個人情報が流出した問題が公表されてから、1カ月余りが過ぎた。
機構は、情報が流出した個人を特定した上で、先月末までにおわびの文書を対象者全員に送り終えた。今後、対象者の基礎年金番号の変更のため、新しい番号を記載した年金手帳や年金証書を送付する方針である。
厚生労働省によれば、ウイルス感染が起きた5月8日から本人確認の対策を強化した6月1日までの間に、住所や年金振込口座の変更届を出した436人に戸別訪問し、全員の本人確認ができた。流出情報を悪用した"なりすまし受給"の被害がなかったことに、ひとまず安堵したい。
ただし、年金加入者に対し、問題に便乗して機構の職員などを名乗り、個人情報を聞き出そうとする不審電話は後を絶たず、油断はできない。機構の専用コールセンターに寄せられた不審電話に関する通報は、6月末までに2372件に上っている。
この問題に絡み、機構や年金事務所から年金加入者に直接電話をすることはない、と機構は強調している。不審電話をはじめ、情報流出を口実にした犯罪に引き続き注意する必要がある。
特に、インターネットが不慣れな高齢者は、機構や厚労省のホームページから情報を手に入れにくい。そこで、周知徹底を求める公明党の提案を受け、政府は注意を呼び掛けるチラシを作成し、自治体などと協力しながら、銀行や病院などで配布している。今後も、幅広い手段で広報活動を進めてもらいたい。
一方、ウイルス感染により情報を抜き取られたファイル共有サーバーには、個人情報以外の情報も含まれていたとみられるが、その全容はまだ分かっていない。真相の究明を急ぐべきだ。
被害が拡大した背景には、情報管理に対する機構の危機意識の低さや、厚労省との連携の不備などが指摘されている。厚労省は、第三者委員会による検証を踏まえ、再発防止に向けた体制を見直す予定だ。実効性のある対策を打ち出し、年金事業への信頼回復に全力を挙げるべきである。