eコラム「北斗七星」

  • 2015.07.08
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年7月8日(水)付



「喉元過ぎれば熱さを忘れる」とは、よく言ったものだ。世界中を恐怖に陥れたエボラ出血熱。ところが、最近、韓国での中東呼吸器症候群(MERS)に目が向き、すっかり記憶の片隅に置かれていた◆そんな折、飛び込んできたのが、ギニアから帰国した男性にエボラ出血熱の疑い、との報。コウモリが宿主とされ、ウイルス株の種類によっては致死率が90%にも上る感染症だ。幸い陰性だったが、あらためて"熱さ"を忘れてはならぬと自戒した◆世界保健機関(WHO)によれば、エボラ出血熱の患者数は2万7000人、死亡者数は1万1000人を優に超えている。リベリアでは終息宣言が出された後に、死亡者と感染者を確認。ギニアとシエラレオネでは、週に両国で計20人以上が発症しているという◆WHOが緊急事態を宣言してから11カ月。"エボラとの闘い"はまだ続いているのだ。懸命の治療でようやく"死の淵"から生還した人が、今度は視覚障がいや、全身に痛みが走る「ポスト・エボラ・シンドローム」(NHK)で苦しんでいるとも聞く◆日本では水際対策の強化へ検疫官の緊急増員を決めた。池田知久氏の訳注『淮南子』(講談社学術文庫)には、名医を通し「人は山にはつまずかず、むしろ蟻塚につまずくものだ」とある。些細なことも見過ごさず、応戦を続けなければならない。(田)

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ