eTPP交渉 国内の影響を考慮し粘り強く
- 2015.07.08
- 情勢/国際
公明新聞:2015年7月8日(水)付
日本や米国など12カ国による環太平洋連携協定(TPP)の交渉が大詰めを迎えている。TPPは、参加国間での関税撤廃や取引ルールの統一などによって、経済活動を活性化させるものだ。政府は、国内産業への影響を十分に考慮して粘り強い交渉に努めてもらいたい。
交渉が大きく動き出したのは、6月29日に米国で大統領貿易促進権限(TPA)法が成立し、米国政府が議会の制約を受けずに交渉を進められるようになったからだ。これを受け参加12カ国は、7月中の大筋合意をめざしている。
日本政府によると、既にTPPのルールや制度に関する全31分野のうち25分野で決着する見通しが立っているという。2国間の関税交渉も加速しており、4日には日本とベトナムの基本合意が判明。あす9日からは日米で事務レベル協議を再開し、米国産のコメに対する日本の輸入枠の規模や、日本製自動車部品の関税撤廃について議論する。
TPP交渉が妥結すれば、世界の貿易額の3分の1を占める巨大な自由貿易圏が誕生する。自動車などの輸出増大が見込まれ、日本にとってもメリットは大きい。日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)や、日本、中国など16カ国による東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉への弾みにもなる。
一方で、関税の撤廃によって日本に安い農産物が多く輸入され、生活が立ち行かなくなる生産者が出てくることを懸念する声もある。詰めの交渉に当たっては、コメなど農産物重要5項目を関税撤廃の対象外とする国会決議を順守しなければならない。
日本には、各国で厳しく対立している分野の調整役も期待したい。例えば、医薬品開発データの保護期間だ。現在、新興国では保護期間は5年だが、米国は10年。新薬よりも安いジェネリック医薬品(後発医薬品)の普及をめざす新興国は、これをTPPで5年以下にすべきだと訴えている。しかし、新薬メーカーを多く抱える米国は10年以上を主張し、溝が埋まらない。
対して日本のデータ保護期間は8年と中間地点にある。合意に向け、各国が歩み寄れる着地点を日本が示してはどうだろうか。