eコラム「北斗七星」
- 2015.07.14
- 情勢/社会
公明新聞:2015年7月14日(火)付
フランス革命は1789年の7月14日に始まった。上流階級に虐げられていた平民が、武器・弾薬が保管されていたバスティーユ牢獄を襲ったのだ。当時のフランスの人口は第一身分の聖職者14万人、第二身分の貴族40万人、第三身分の平民2600万人だったと言われている。第一身分と第二身分は納税義務のない特権階級で、納税を強いられていた98%に近い平民が特権階級を支えていた◆革命期にフランスを旅したイギリスの農学者アーサー・ヤングの著書『フランス紀行』(宮崎洋訳 法政大学出版局)に、農婦に出会ったくだりがある。「この婦人は労苦のため腰がひどく曲り、顔には深いしわがきざまれ、こわばっていたから、近くで見ても六〇か七〇才とみなされかねなかった。ところが彼女はまだ二八才にしかならないと言っていた」◆「旅行をしたことのないイギリス人には、フランス農村女性の圧倒的大多数の容姿は想像つくまい」。あまりの痛ましさに驚愕したのだ◆革命一カ月後の「人間は生まれながらにして自由であり、権利において平等」との『人権宣言』、その後の虐殺や独裁政治、そしてナポレオンによるクーデター、帝政国家の誕生と時を刻むが、果たして農婦はどうなったのだろう◆悪政に泣かされるのはいつの世も平民では困ると改めて思う。(流)