eサイバー対策 技術アップと人員増加が必要
- 2015.07.23
- 情勢/解説
公明新聞:2015年7月23日(木)付
政府機関や企業、学術機関などでサイバー攻撃による機密情報の流出被害が相次ぎ、脅威が高まっている。
国立研究開発法人・情報通信研究機構の調査では、各機関を狙ったサイバー攻撃関連の通信が、昨年だけで約256億6000万件に上った。今年5月に日本年金機構で125万件の年金情報が流出した問題は記憶に新しいが、これ以上の被害発生は食い止めなければならない。官民挙げた対策強化を急ぐべきだ。
日本は、サイバーセキュリティーを担う人材が不足している。内閣のサイバーセキュリティーセンターによると、国内で従事する約26.5万人のうち16万人程度は必要な技術を習得していないのに加え、さらに約8万人の増員が不可欠とされている。
事態を改善するため、政府は本格的な人材育成に乗り出す。2020年の東京五輪・パラリンピックを見据え、自治体や企業などを対象に競技形式のサイバー攻撃・防御演習を来年から5年間行う方針を決めた。具体的には、五輪の模擬ホームページやチケット販売システムなどを用意し、サイバー攻撃が発生したという想定で攻撃側と防御側に分かれて演習を行い、実践的な対応力を磨く。
政府は、自治体や企業のセキュリティーレベルやサイバー人材の技術習得度を認識してもらい、一つでも多くの機関が演習に参加できるよう後押しする必要がある。その上で、演習参加後は習得内容が応用できるよう、各機関からの相談にも積極的に応じてもらいたい。
併せて、不足する8万人の増員に向け、公的資格や能力評価の改善、教育プログラムを設置する大学などへの支援も進めなければならない。
ただ、サイバーセキュリティーの強化には、経営者など上層部の理解が欠かせない。「IT人材白書2015」(情報処理推進機構発表)によると、企業内のサイバー人材の育成について、半数以上の企業が「検討していない」と答えている。
情報の流出は、顧客に損失をもたらすだけでなく、企業の信頼や存続にも直結する状況を招きかねない。政府や経済界には、早急な意識改革を促す取り組みを求めたい。