e中小企業の海外進出 現地事業安定へ政府が支援を

  • 2015.07.29
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年7月29日(水)付



海外に進出する中小企業が増えている。


中小企業庁が先月まとめた調査によると、海外に現地法人を持つ中小企業は2006年から増え始め、12年には中小企業全体の約22%を占める5183社に増加。06年の1686社から3倍以上に増えた。同庁は、海外で事業を展開する中小企業が、今後も増大していくと見ている。


中小企業の海外進出は、なぜ増えているのか。同庁によると、「進出先の国で自社製品の需要拡大が見込まれるから」という理由が最も多いという。


特に、新興国の多くは、人口が増加傾向にあり、1人当たりの所得水準も向上している。東南アジア諸国連合(ASEAN)のように経済統合が進む地域では、進出先の国だけでなく、近隣諸国も含めた広範な市場で製品を売ることもできる。販路開拓をめざす中小企業にとって、海外は魅力的な市場であろう。


しかし、海外進出は決して容易ではない。同庁によると、海外からの撤退を余儀なくされた中小企業は33%に及ぶ。日本では経験しない、想定外のトラブルに見舞われることも少なくない。


例えば、中国江蘇省に進出した岡山県の縫製メーカーは、同省から突然立ち退きを命じられた。フィリピンに進出した奈良県の車の修理会社は、信頼していた現地の経営者に修理用の設備や備品などを持ち去られ、2000万円の損失を被った。「現地任せ」では、中小企業は安心して海外で事業を展開できないだろう。政府のしかるべき支援が必要なのではないか。


進出先の国の法制度や商慣習などの知識が不足している中小企業も多い。日本より税率が低い国に進出する場合、現地で得た利益を日本の親会社にきちんと分配し、租税回避の防止に努めなければならない。必要な情報についての助言や指導が求められる。


経済産業省は今秋から、中小企業が自社の製品の信頼性を海外で証明する国際規格の認定を得る手続きを進めやすくするため、専門家の助言を受けられる体制を整備することを決めた。政府は、こうした支援を今後も増やしていき、中小企業の海外進出を力強く後押ししてほしい。

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