e院平和安全特委 西田参院幹事長の質疑(要旨)
- 2015.07.30
- 政治/国会
公明新聞:2015年7月30日(木)付
29日の参院平和安全法制特別委員会で行われた公明党の西田実仁参院幹事長の質問と、政府側の答弁の要旨は以下の通り。
「自衛の措置」は全く合法
国連憲章が禁じる戦争ではない
西田実仁参院幹事長:28日、存立危機事態への対応ということが、戦争への参加なのかという質疑が行われた。
わが国がまだ直接攻撃を受けていない。しかし、わが国と密接な関係にある他国に対する攻撃があって、それによって、わが国に対して、わが国が直接攻撃を受けたと同様の重大かつ深刻な被害が明らかな事態を存立危機事態という。
戦争という言葉には、侵略戦争とか、違法な武力の行使といったニュアンスがある。わが国が直接攻撃を受けて対応する、個別的自衛権の措置の際、戦争に参加するとは言わない。
そこで、今回の平和安全法制における憲法9条の下で許される自衛の措置は、わが国に対する攻撃がある時はもちろんだが、まだわが国に対する攻撃がなくても、密接に関係する他国に対する攻撃がきっかけとなって、わが国に甚大な影響を及ぼす明らかな客観的な危険がある、こういうときに対応するものであって、これを戦争への参加と呼ぶにはかなり違和感を覚える。
安倍晋三首相:国連憲章の下では戦争は違法化されている。国連憲章の下で違法でない武力の行使は、個別的自衛権と集団的自衛権によるもの、国連安保理決議に基づく集団安全保障措置の三つのみだ。
わが国が新3要件の満たされた場合に行う武力の行使は、あくまでも、わが国の自衛のための措置であり、国際法上も正当な行為だ。にもかかわらず、戦争する、戦争に参加するという表現を用いることは、あたかも違法な行為をわが国が率先して行っていると誤解されかねない、極めて不適切な表現だと思う。わが国の自衛のための措置、わが国の防衛のための実力の行使という表現を用いることが適切であると考える。
西田:存立危機事態への対応が、わが国への攻撃がまだないのに、それに対し対応するのは先制攻撃ではないか。こういう趣旨の質疑も28日にあった。
岸田文雄外相:国連憲章において自衛権が認められているのは、武力攻撃が発生した場合に限られている。
一方、集団的自衛権とは国際法上、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当化される権利とされている。ここにおいては、他国に対する武力攻撃の発生が大前提だ。
集団的自衛権は、国連憲章上、加盟国に認められた固有の権利だ。だから、国際法上合法と言えない先制攻撃と、集団的自衛権、これは全く異なるものだ。
西田:今回の平和安全法制の中で、従来から政府がとってきた基本的な論理、考え方は変えていない。しかし、その当てはめを変える。それは、日本を取り巻く安全保障環境がどう変わったのかという認識によって変わってくるわけなので、ここが重要になってくる。
安倍首相:北朝鮮のミサイルの脅威に対しては、日米で構築しているミサイル防衛体制が必要不可欠であり、日米の共同対処が死活的に重要であると考えている。
また、中国については公表国防費が1989年以降、ほぼ毎年2桁で伸びていて、過去27年間で41倍(の費用)になって、今年度においては中国の国防費は日本の防衛予算の3.3倍に達しており、軍事力を広範かつ急速に強化している。
抑止力をさらに向上へ
紛争解決は外交努力が前提
西田:今回の平和安全法制全体の法整備によって、特に日本とアメリカの一体運用がどう強化されていくのか。
中谷元防衛相:平和安全法制の整備が実現すれば、例えば平素から米軍艦艇等の防護を行うことが可能になる。自衛隊と米軍の連携した警戒態勢等の強化につながる。また、重要影響事態において米軍に対してより充実した支援を行うことが可能になる。
西田:戦後日本が歩んできた平和国家としての歩み。それは外交と抑止力が、車の両輪のようにして成し遂げてきて、それをさらに強固にしていくのが平和安全法制である。
中国との信頼醸成のためにどうするか。
安倍首相:次の日中首脳会談については現時点では何も決まっていないが、私の対話のドアは常にオープンであり、国際会議など機会を捉えて実現したい。
また、私から習近平国家主席に対し、昨年11月の日中首脳会談の際に、ガス田開発を念頭に東シナ海での協力の必要性に言及した。さらに本年4月の日中首脳会談においては東シナ海で緊張状態が継続していることを指摘しつつ、2008年6月合意の実施に向けた協議を加速させたい旨を働き掛けている。
ガス田の問題もそうだが、対話を通じて問題を解決していくべく努力していきたい。常に戦略的互恵関係の原点に立ち戻りながら、両国関係を発展させるように両国で努力をしていきたい。
西田:公明党は平和安全法制全体について、政府の恣意的な運用を防ぐ意味からいわば三重の歯止めを掛けた。
その一つは憲法の適合性という、憲法上の歯止めだ。また法制度。法制上の歯止め、さらにはその政策を実行するかどうかの政策判断の歯止め。この三重の歯止めだ。
まず憲法上の歯止めについては、憲法9条と憲法13条の整合的な解釈から導き出された(憲法の下で)許容される自衛の措置。これはあくまでも自国防衛。国民の権利を守る場合のみであり、それを新3要件として、過不足なく、全て法律に書き込むべきであると与党協議で主張してきた。
安倍首相:わが国として武力の行使を行うことが憲法上許容されるのは、新3要件全てを満たすときだけである。
新3要件のうち、第2要件については、今回の法整備において新たに、事態対処法改正案第9条で、武力攻撃事態または存立危機事態に至ったときに、政府が策定する対処基本方針に、わが国の存立を全うし、国民を守るために、他に適当な手段がなく、事態に対処するため武力の行使が必要であると認められる理由についても明記することを義務付け、これを含め、直ちに国会の承認を求めることとしている。
自衛の措置としての武力の行使はあくまで最後の手段であり、紛争の平和的解決のために外交努力を尽くすことが当然の前提である。そうした他の手段を尽くさずして、武力の行使を行うことが憲法上許容されないことは当然であり、これを国会や国民に対して、しっかりと説明する責任を政府に義務付ける今回の法案は、武力の行使についての明確な歯止めとなっていると考えている。
議会制民主主義は最大の歯止め
西田:公明党は与党協議において、法制度上の歯止め、すなわち、自衛隊を海外に派遣する際の3原則を新たに設けるよう主張した。これは、自衛隊の海外派遣が時の政府の自由になり、無制限な派遣になるという懸念に対する歯止めである。
第1は国際法上の正当性の確保、第2は国会の関与など民主的な統制、第3は自衛隊員の安全確保―この3原則を主張してきた。
第2については、議会制民主主義の日本においては、国民こそ最大の歯止めであるということの確認である。
特に、重要影響事態、わが国の平和と安全に関わるところは原則、事前の国会承認だ。
国際平和共同対処事態、これは後方支援の一般法(国際平和支援法案)であるが、わが党が与党協議の中で大変強く主張したこともあり、例外なき事前承認という形になった。
国会の責任は大変重くなっているということであるが、気になるのは、何を国会承認するのかという具体的なことである。
重要影響事態安全確保法に基づく、国会承認案件には一体何を具体的に記載するのかについて聞きたい。
中谷防衛相:重要影響事態法において、自衛隊による後方支援活動、捜索救助活動、船舶検査活動の実施については国会承認を求めるとされている。その承認に際しては、可能な限り、最大限の情報を開示して、丁寧に説明をする考えである。
そのために、国会に提出する基本計画には、重要影響事態に際し、自衛隊が実施する後方支援活動などの内容などを具体的に記載することとしている。
さらに今回の改正において、新たに、(1)事態の経緯(2)わが国の平和および安全に与える影響(3)わが国が対応措置を実施することが必要であると認められる理由―を基本計画に記載することを法定化し、政府として、国会に対してしっかりと情報提供を行うことを一層明確にした。
首相 「事前の国会承認を追求」
西田:国会承認について、存立危機事態への対処のための防衛出動について聞きたい。
存立危機事態であっても、武力攻撃事態にはならないケースがあり得る。ただ、現実の安全保障環境を踏まえたときに、存立危機事態に該当するような状況は同時に、武力攻撃事態等、すなわち日本が直接攻撃されるような事態に該当することが多いというふうに整理されている。
武力攻撃事態等と存立危機事態が重ならない極めて珍しいケースにおける国会の関与は、どうあるべきなのか。
存立危機事態であるが、武力攻撃事態等ではない場合の国会承認。わが党としては、こうした極めて珍しいケースでは、時間的な余裕ということも考え合わせると、国会の承認は事後ではなく、事前になるのではないかと理解している。
安倍首相:存立危機事態を認定して、自衛隊に防衛出動を命じる場合には、事前の国会承認により難い場合に、事後承認が認められているが、原則はあくまでも事前承認であることから、政府として、存立危機事態であるが、武力攻撃事態ではない場合も含めて、可能な限り国会の事前承認を追求していく考えである。
例えば、ホルムズ海峡の機雷封鎖に起因する存立危機事態ということが考えられるが、ホルムズ海峡における機雷封鎖に起因して、存立危機事態を認定し、自衛隊に防衛出動を命じる場合には、基本的には国会の事前承認を求めることになると想定している。
西田:自衛隊が後方支援をする際の、実施区域の指定について聞く。法律では防衛相が円滑、安全に活動し得る場所を指定すると書かれているが、その運用方針については、(これまでの)首相答弁通り、戦闘行為がその期間中、発生しないと見込まれる場所であるということである。これがどう担保されるのか。
安倍首相:実施区域の指定は、内閣の長たる首相が内閣全体として得た情報などに基づき実施要綱の承認を通じて、適切に判断する。
従って、部隊などが現実に活動を終えるまでの間、戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域に指定することは、首相および防衛相が関与するプロセスを通して、法律上、十分に担保されている。
自衛隊派遣には慎重な政策判断
西田:先ほどの三重の歯止めの中で、自衛隊を海外に派遣する際の政策判断として三つの視点が掲げられている。三つの視点から判断したと国民に理解を得ることが重要であると思う。
安倍首相:平和安全法制が整備されれば、法律の要件を満たせば必ず自衛隊員が派遣されるわけでは全くない。自衛隊を派遣するか派遣しないかは慎重な政策判断を行う。
具体的に政策判断を行うに際して、(1)わが国の主体的判断であること(2)自衛隊の能力、装備、経験等に照らして自衛隊にふさわしい役割であること(3)その前提となる外交努力を尽くすこと―などを重要な視点として慎重に政策判断を行うことになる。
国際平和支援法案の基本計画やPKO法の実施計画については適切な形で策定したい。