eコラム「北斗七星」

  • 2015.08.06
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年8月6日(木)付



米国による原子爆弾の投下から70年。広島はきょう6日、「原爆の日」を迎えた。被爆地は終日、鎮魂と平和への祈りに包まれる◆午前8時15分、爆心地の上空約600メートルで爆発した原爆の熱線、爆風、放射線によって、「一瞬のうちに約7万人が命を落とし」(奥田博子『原爆の記憶』)、その年の暮れまでに約14万人が亡くなった。その大半は女性、子ども、老人などを含む非戦闘員だった◆さらに、被爆後、家族を捜したり、救護のために入市した人を残留放射線が襲う。放射性降下物を含む「黒い雨」も降った。生き残った多くの人が、がんや血液疾患など放射線による後障がいに、いまも苦しんでいる◆心の傷も深い。「私は母を火の海に残して逃げた不孝者です」。そう語る被爆者がおられた。自分だけが生き残ったという罪悪感「サバイバーズ・ギルト」を抱えて生きる辛さは想像を絶する。また、近年、被爆者のPTSD(心的外傷後ストレス障害)出現が指摘されている。理不尽な差別もあった。被爆者の傷は70年経っても癒えることはない◆その被爆者が怒りや恨みの感情を克服して到達した、「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」という思想ほど尊いものはない。被爆者の核廃絶への願いを、国際社会に共有させ、未来の世代に引き継いでいかねばと思う。(中)

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