e木質バイオマス発電 豊富な森林資源で温暖化防げ
- 2015.08.10
- 情勢/解説
公明新聞:2015年8月8日(土)付
再生可能エネルギー(再エネ)の普及を加速することが目標達成の鍵を握っている。
政府は地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を含む温室効果ガスの削減目標を決定した。「2030年度に13年度比で26%減」とするなど、環境立国の名に恥じない数字が並ぶ。
削減目標は、今年末に開催される国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)に先立って国連に提出することから、国際的な約束事としての側面を持つ。
ただ、東日本大震災後の電力不足で老朽化した火力発電設備を稼働する日本は、温暖化対策が遅れ気味だ。また、国民も節電に懸命に取り組んでおり、これ以上の温暖化抑制のための努力を求めるのは難しい。
温暖化抑制と安定的な電力供給の両方に貢献するエネルギーが必要な状況下においては、生物由来の資源を使うバイオマス発電の拡大を強力に後押しすべきではないか。
特に、木質バイオマス発電は、CO2を吸収する再生可能な森林が発電源だ。注目すべきは、わが国のエネルギー源としての森林資源の豊かさである。森林は戦後の住宅需要を賄うために一時大量に伐採されたが、林業関係者の植林で現在の森林蓄積は50億立方メートルを超えている。これは世界有数の林業国家であるドイツやスウェーデンを、はるかに上回る資源量だ。
現在、火力発電で使う液化天然ガスの輸入増加で、電気代は右肩上がりの状態にある。林業の担い手減少で、ほぼ手付かずとなっている森林を電力に変えて既存の電力と併用すれば、電気代の低減も期待できるのではないか。
森林面積の割合が全国1位の高知県でバイオマス発電を試験導入した結果、森林荒廃の阻止と雇用創出に成功した例はよく知られている。
これだけ期待される木質バイオマス発電だが、導入する自治体は増えていない。導入が進まない背景には太陽光発電と比較して、バイオマス発電に必要な設備が複雑多岐にわたるため、知識と技術の習得に時間がかかるからだ。
試行錯誤で導入をめざす自治体を、専門の研究機関が支援するような体制づくりが求められる。