e次期学習指導要領 知識生かす教科内容へ改善を
- 2015.08.14
- 情勢/解説
公明新聞:2015年8月14日(金)付
暗記型から知識を生かす課題解決型の教育に転換するための議論が本格化する。
文部科学省は、2016年度中に全面改定する学習指導要領の方向性を示す骨格案を示した。指導要領は約10年ごとに改定される。次期指導要領に基づく授業は小学校が20年度、中学が21年度、高校が22年度から開始される予定である。小学校の英語は3年生から始め、英語力の向上をめざす。中学の新教科・科目は骨格案では触れていない。
今回の改定では高校教育のあり方が焦点だ。骨格案では各教科で必修科目や科目構成を大幅に見直し、教科・科目を横断した学びを重視したのが特徴だ。
地理歴史に関して、現行は必修の世界史をなくし、日本と世界の近現代史を合わせて学ぶ「歴史総合」を創設する方向。「地理総合」も新設して必修とすることで、時間軸と空間軸の両面で思考力を育むことをめざす。
文科省調査によれば、世界史や日本史の学習が大切と考える生徒が増える一方で、近現代分野の学習内容の定着が低い傾向にある。このため、日本と世界の近現代史を関連付けて教え、歴史の転換点や見方を考察することに重きを置く。
現代史は評価の定まっていないテーマが多いため、多角的な視点から生徒が学べる工夫が必要だろう。教科横断的な融合授業の先進事例を参考に、次期改定が掲げる課題発見・解決に向けて主体的かつ協働的に学ぶ学習方法「アクティブ・ラーニング」の実践の場とする必要がある。
新設の「公共」では、選挙権年齢の18歳への引き下げを踏まえ、主権者教育を導入。模擬投票なども取り入れ、生徒が主体的に社会参画する力を養う。多重債務などの消費者教育も扱う方向だが、他教科にまたがるテーマも多く、内容の整理が今後の課題だ。
次期指導要領の具体的な内容は今後、文科省の中央教育審議会で詰めるが、各学校は学びの質を転換する対応が迫られる。大学入試センター制度に代わり導入される予定の「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」などを見据えた大学入試の改善も必要だろう。子どもが主体的に学べる基盤づくりが議論の前提だ。