eコラム「北斗七星」

  • 2015.08.18
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年8月15日(土)付



北山修作詞、杉田二郎作曲の『戦争を知らない子供たち』。昭和の名曲の一つとして、今でもTV番組で紹介されるフォークソングだ。実はこの歌には忘れられない思い出がある◆中学1年生の秋に開かれた全員参加のクラス対抗合唱祭。生徒数は多く、1学年に9クラスはあったと記憶する。どんな歌でもよかったので、記者がいたクラスは『戦争を知らない子供たち』を選曲。銅賞を取ったのだ。喜びが爆発したのは言うまでもない◆曲名にある"戦争を知らない"同世代の多くは結婚。既に二世も育っている。そんな年代に当たる日本福祉大学の学生平和意識調査によれば、終戦の日を正しく答えることができた学生は2008年で51%。12年には26%と大幅に減っていた◆戦争の風化は昭和史の研究をも鈍らせる。そう思いがちだが、実際は違う。最新の研究では「幾重にも逆説の重なった複雑なプロセスだということが明らかになっている」(『昭和史講義』ちくま新書)のだ。編者の筒井清忠氏は「歴史の単純化は単純な人々だけによって動かされる『単純な歴史』を生み出す」と警告している◆終戦から70年。「メディアから自由な大衆というものは存在しない」(加藤周一著『私にとっての20世紀』岩波書店)。単純化に惑わされず、戦争を未然に防ぐ方策と冷徹な判断が求められよう。(田)

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