e浄化水放出容認 漁業者の苦渋の決断に応えよ

  • 2015.08.19
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年8月19日(水)付



まさに苦渋の決断であったに違いない。その重みを強く受け止め、国と東京電力は真摯に対応してもらいたい。


東電福島第1原発の建屋周辺の井戸「サブドレン」から汚染地下水をくみ上げ、これを浄化処理して海に放出する計画を、福島県漁業協同組合連合会(県漁連)が条件付きで容認することを決めた。


放射性物質で一度汚染された地下水の放出は初めてで、廃炉工程に不可欠な汚染水対策を確実に前進させる措置として期待がかかる。風評被害の払拭や福島復興に果たす効果も小さくない。


だが、地元漁業者にとっては、「期待」はそのまま「不安」の裏返しであることを忘れてはなるまい。風評被害がかえって広がることにならないか。初歩的ミスで海洋汚染を招くことはないのか。懸念と苦悩は尽きない。


漁業者たちの不安の根っこにあるのは、東電の度重なる"裏切り"がもたらした「拭い難い不信感」(漁協組合員)だ。サブドレン計画を地元漁業者に提示した直後の今年2月にも、建屋屋上にたまっていた汚染水の外洋漏出を東電が公表していなかったことが発覚し、危機管理の甘さが改めて浮き彫りになった。


それでも県漁連が今回、半年以上にわたる協議を経て条件付き容認に舵を切ったのは、汚染地下水をこれ以上放置すれば、漁業再開がさらに遠ざかりかねないとの判断からだ。東電は、もはやどのような些細なミスも許されないことを肝に銘じ、危機管理の徹底強化を図る必要がある。


第1原発の建屋には今も、毎日約300トンの地下水が流れ込み、汚染水となって増え続けている。サブドレン計画は、この汚染地下水の量を抑制するのが目的だ。実施されれば、建屋周囲の地盤を凍らせる「凍土遮水壁」計画と相まって、流入量は1日80トンまで減ると見込まれる。


県漁連は既に、水質管理の徹底や第三者監視下での安全性確認、広報強化など5項目の受け入れ条件を国と東電に提示済みだ。細部はともあれ、全体として当然の要求であり、国・東電にこれを拒む理由があるとは思えない。誠実な対応と万全の体制で、サブドレン計画を一日も早く軌道に乗せてもらいたい。

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