e世界同時株安 金融安定化へ各国の協調が重要
- 2015.08.26
- 情勢/解説
公明新聞:2015年8月26日(水)付
世界的な株価の下落は収束に向かうのか。東京株式市場の日経平均株価は今週に入っても急落が止まらず、25日は約6カ月半ぶりに終値が1万8000円台を割り込む大荒れの値動きとなった。政府は事態を注視し、国民生活に悪影響が出ないように取り組まなければならない。
市場混乱の発端は、世界経済をリードしてきた中国の景気減速だ。中国は昨年11月以降、預金準備率の引き下げや利下げを繰り返し、大胆な金融緩和にかじを切った。今月には人民元の切り下げも行った。しかし、上海市場の株安に歯止めがかからず、世界の金融市場は動揺した。これに原油価格の急落なども加わり、世界経済の先行きに対する不安が高まっている。
株価の不安定化が続くと、回復基調にある日本経済に水を差しかねない。投資家は株や原油などの「リスク資産」に背を向け、円や先進国の債権など比較的安全な資産にシフトしている。この傾向が強まれば、日本の輸出関連企業の経営悪化は避けられない。政府は実体経済を強固にするため、民間企業の力を引き出す成長戦略の着実な実行を急ぐべきだ。
危機の打開に向けては、中国が追加の金融緩和や財政出動などの対策を打ち出し、混乱を沈静化することが何よりも重要だ。また、米連邦準備制度理事会(FRB)が9月にも踏み切るとみられていた利上げを延長するか否かも大きなポイントといえる。米国株の急落を受け、FRBが利上げを直ちに実施する可能性は遠のくだろうが、正式に延期が決まれば、市場にとっては安心材料になるだろう。
ただし、複雑な要因が絡み合う世界金融市場の対策を各国が単独で進めるには限界がある。主要国が協調し、金融の安定化と景気回復策に取り組むべきだ。そのためには、自国経済を過度に優先する姿勢は戒めたい。
日米欧と新興国による20カ国・地域(G20)は、各国が政策を変更する際は世界経済への影響に留意することで合意している。9月にトルコの首都アンカラで開かれるG20財務相・中央銀行総裁会議では、その点を改めて確認し世界金融の安定化をリードしてもらいたい。