e子どもの自殺 "夏休み明けの変化"見逃すな

  • 2015.08.31
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年8月29日(土)付



新学期こそ、子どもたちにとって、希望あふれる新しいスタートであってほしい。夏休み明け前後、各地で相次ぐ、自殺と思われる子どもの悲報を耳にするたびに、胸がつぶれそうになる。亡くなった誰もが、本当は生きていたかったに違いない。


内閣府が今年6月、公表した自殺対策白書の「9月1日は子どもの自殺が最も多い」との調査結果が高い関心を呼んでいる。2013年までの42年間で、子どもの自殺を日別に調べると、9月1日が最多の131人で、4月11日(99人)、4月8日(95人)、9月2日(94人)と続く。


新学期前後に、自殺が多発するのは、生活環境の大きな変化に伴い、児童・生徒がプレッシャーを感じたり、精神的動揺が生じるのでは、と分析されている。今の時期は、危機に直面している子どもがいることを認識すべきだ。


同白書によると小学生の自殺の原因・動機は「家族からのしつけ、叱責」「親子関係の不和」など家庭生活に起因するものが多い。中学生になると「学業不振」や「学友との不和」「いじめ」が増える。高校生では「進路」や「学業不振」「うつ病」が目立つ。


だが、10代前半では、周囲が兆候に気付かないうちに、自ら命を絶つ場合が少なくない。行為に及ぶ前には、悩み、苦しんで、救いを求める懸命の叫びを上げている。


落ち込んだり、好きなものに興味を失う、不眠や食欲不振......。これという決定的なものはないが、行動や心に"微妙な変化"が表れる。教育現場はいうまでもなく、家庭や地域で、子どものシグナルを、より敏感に受け止めよう。


不安を感じる時には、「あなたはかけがえのない存在だ」と言葉に出して心配することが大切だ。子どもの気持ちを傾聴し、独りにしないよう寄り添おう。ただし、親や教師が一人で抱え込むことは困難である。秘密を守り、子どもとの信頼を築きながら、相談機関や医療機関と積極的に連携することも必要だろう。


ソーシャルメディアによるいじめの陰湿化、虐待や貧困など、子どもが「生きづらい」時代である。社会全体で、子どもが悩みを話しやすい環境、安心できる居場所づくりへ、知恵を出し合いたい。

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