e米国が海洋戦略を発表 日中連絡メカニズムに強い関心
- 2015.08.31
- 情勢/解説
公明新聞:2015年8月31日(月)付
インド洋から南シナ海と東シナ海、太平洋にまで及ぶ広大なアジア太平洋地域。海上輸送される貨物の取扱量で上位の世界10大港湾のうち、8港湾が集中する国際貿易の要衝であり、この地域の平和を維持することは、日本の安全保障にとって極めて重要であることは言をまたない。
米国も、この地域を最も重視している。米国防総省は今月、アジア太平洋地域の海洋安全保障戦略について報告書を初めてまとめ、公表した。
同報告書では「米国はアジア太平洋地域に最高の能力、資産、人員を投入する」と明記されている。ロシアとの緊張の高まりや、過激派組織「イスラム国」との戦いが、し烈さを増す中で、こうした姿勢を鮮明にしているところに、米国の本気がうかがえる。
米国が同戦略を発表した背景には、この地域での中国の急速な海洋進出がある。特に、中国が南シナ海の南沙諸島で岩礁の埋め立てを実施し、滑走路を建設するなどして軍事拠点化を進めたことが、米国の危機感を高めた。
米国は、この地域において、中国が軍事力で圧倒的優位に立っている状況も深刻に受け止めている。同報告書によると、海軍艦船数では、日本の67隻に対し、中国は303隻と大きな差があるからだ。
米国は今後5年間で、太平洋艦隊に所属し、米国領外で活動する艦船を約3割増やす方針を示した。沖縄県・尖閣諸島の防衛義務を果たすことも明らかにしている。この地域の安定のため、日本は米国としっかりと連携し、日米防衛協力体制を、さらに強固なものにしていきたい。
同時に、米国は、アジア太平洋地域において、軍事衝突を避けるための体制整備を進めることを戦略の柱の一つに掲げている。そのため、日本が中国と、海上や上空で艦船や航空機が、挑発行為などをきっかけに軍事衝突に至ることを防ぐための「海空連絡メカニズム」の早期運用実施に向け、交渉を進めていることを、米国は強く支持している。
アジア太平洋地域には、こうした軍事衝突を防ぐための制度がまだない。日本は平和と安全のため、中国と同メカニズムの運用を早急に実現し、この地域の制度づくりをリードしたい。