e中小企業承継しやすく
- 2015.09.02
- 情勢/社会
公明新聞:2015年9月2日(水)付
民法特例を親族外に拡大
社会の高齢化に伴い、会社経営者も半数以上が60歳を超え、多くの企業で後継者問題が喫緊の課題となっている。そうした中、後継者が親族外でも中小企業や小規模事業者の事業を承継しやすくするための「改正中小企業経営承継円滑化法」が8月21日の参院本会議で可決・成立した。来年春から施行される見込み。
税制支援に続き改正円滑化法が成立
親族外承継は近年増加し、20年前までは全体の1割に満たなかったが、現在は約4割に達する。このため、今年1月からは、「親族限定」だった事業承継税制(相続税・贈与税の優遇措置)の対象を「親族外」にまで拡大。これに続き、今回の法改正では、後継者に自社株を生前贈与する際の混乱を回避するための民法特例についても、親族に限らず、親族外にも広げた。
親族外も対象となる民法特例は「遺留分特例」とも呼ばれる。民法では、事業の後継者以外の相続人に遺留分(遺産を譲り受ける最低限の保障)として株を受け取る権利を定めているため、後継者に株を集中させて経営権を確立することが難しくなるケースも少なくない。そこで、経営権の分散を防ぐ観点から民法特例を設け、権利者全員の合意や家庭裁判所の許可などを前提に後継者への全株譲渡を可能にしている。
今回の法改正によって、事業承継支援における親族と親族外の区別がすべて取り払われることになり、第三者への承継がしやすくなる。
一方、改正法には、公明党が衆院選重点政策などで掲げてきた「小規模企業共済制度」の機能強化も盛り込まれた。同制度は、中小企業や小規模事業者の経営者が廃業・退職後の生活安定を図る資金を積み立てるもの。このうち、個人事業者について、低く抑えられていた親族内承継後の支給額を廃業した場合と同等の水準へと引き上げた。また、中小企業などの会社役員についても、65歳以上で退任する際の支給額を引き上げた。
大きく前進する事業承継支援だが、改善の余地は残る。公明党経済産業部会の富田茂之部会長(衆院議員)は「個人事業主の事業用資産に対する相続税・贈与税の負担軽減などの税制支援の拡充、専門家による相談体制や支援の周知策の充実に引き続き取り組む」としている。
公明の尽力大きい
TKC全国政経研究会政策審議副委員長・税理士
今仲 清氏
近年、親族外承継が増える中、税制面に続いて民法特例でも、親族と同じ支援が受けられるようになることは非常に良かった。
ただし、相続税額の算出のあり方で課題が残る。親族外への事業承継により、結果的に親族側の相続税負担が重くなってしまうケースが少なくない。円滑な承継促進へ改善が必要だ。
公明党は、2008年の中小企業経営承継円滑化法成立を実現するなど中小企業の経営支援全般にわたって大変尽力してくれた。今回の改正でも、われわれ実務者の指摘を当局に伝えるなど、きめ細かく対応してくれた。とても感謝している。残る課題も含め、引き続き支援をお願いしたい。