e世界津波の日 日本主導で制定の機運高めよう
- 2015.09.07
- 情勢/解説
公明新聞:2015年9月7日(月)付
政府は15日に開幕する国連総会で、11月5日を「世界津波の日」に制定するよう提案する方針だ。
この日は、日本の津波対策推進法で定められた「津波防災の日」である。安政南海地震(1854年11月5日)の津波の際、稲束の火を目印に住民が避難した"稲むらの火"の逸話にちなむ。多くの国々からの賛同を得て採択・制定をめざしたい。
世界では、大津波に何度か襲われ、多数の犠牲者を出している国は少なくない。インド洋大津波(04年12月)では東南アジアを中心に22万人を超す犠牲者が出た。特に途上国では、津波への十分な備えが整っていないため、襲来すれば甚大な被害を招く場合がある。
数多くの津波を経験した日本が、災害大国としての知見や経験、防止策を世界に広めることによって、被害を少しでも食い止めるための国際貢献を果たす意義は大きい。
今年3月に仙台市で開かれた国連防災世界会議では、津波からの迅速な避難を促すための情報提供のあり方などが議論された。5月に福島県いわき市で開催された太平洋・島サミットでも、東日本大震災の被災地の視察が実施され、津波に対する参加国の関心を集めた。この動きをさらに広げるためにも「世界津波の日」を制定し、国際社会の意識を高めていきたい。
制定されれば、この日に合わせ、津波に関する啓発活動や避難訓練が、世界規模で展開されると期待される。国内外の人々が、「まずは早く避難」との教訓を胸に刻んでもらう機会となるよう望む。
外務省は16年度予算の概算要求に、「世界津波の日」制定に向けて、観測・防災に関する技術協力を行う対策費を約10億円計上している。
重要な対策の一つが、防災分野での人材の育成である。これまでにも外務省は政府開発援助(ODA)を通して、東南アジア諸国連合(ASEAN)の防災担当職員を東日本大震災の被災地などで受け入れ、災害に関する研修を行っているが、一段と本格化する必要がある。
過去に大規模な津波に襲われた国々に働きかけ、制定の機運を日本が主導してもらいたい。