e被爆者の医療費支給 国内外の"援護格差"解消を急げ

  • 2015.09.08
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年9月8日(火)付



国内と海外の被爆者の平等な援護を実現したい。


韓国人の被爆者らが、被爆者援護法に基づき、韓国の医療機関で受診した医療費の全額支給を大阪府に求めた裁判で、最高裁はきょう8日、大阪府の申請却下処分を取り消す判決を言い渡す。


最高裁は高裁の判決の見直しに必要な弁論を開いていないため、全額支給を認めた大阪高裁の判決が維持される。


原告は、広島市で胎内被爆した李洪鉉さん(69)と、同市で被爆した後に帰国し、既に死亡した韓国籍の男性2人の遺族の計3人。李さんらは2006~10年、肝臓がんや心臓病の治療を韓国で受け、総額約1700万ウォン(当時の為替相場で約120万円)を自己負担していた。


一審・大阪地裁は13年の判決で、「被爆者援護法は在外被爆者に適用されないと限定的に解釈すべきではない」として、大阪府の処分を取り消した。二審・大阪高裁も一審の判断を支持したため、府側が上告していた。海外に住む在外被爆者に医療費の支給を認める判決が確定するのは初めて。


国内と海外の被爆者の"援護格差"は、かねてから問題視されている。


このため公明党は、被爆者援護法を改正し、在外被爆者が海外からでも被爆者健康手帳を申請できるようにするなど、援護の拡充に一貫して取り組んできた。 


在外被爆者に対する医療費の全額支給の実現は、"援護格差"問題解決のための、最後のとりでであるといわれている。


被爆者援護法は国が医療費を全額負担すると規定しているが、在外被爆者が海外の医療機関で受診した場合は適用されない。別途、上限付き(年間30万円)の助成事業で対応しているものの、国内の被爆者であれば、国外の医療機関で受診しても医療費が全額支払われるのに、在外被爆者には支払われないのは、あまりにも差別的である。


厚生労働省によると、被爆者健康手帳を所持する在外被爆者は、15年3月末時点で33カ国に4280人いるという。国や自治体は被爆者援護法の運用を見直すなど、"援護格差"解消に向けた取り組みを早急に進めてほしい。

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