e参考人(与党推薦)の意見陳述(要旨)

  • 2015.09.09
  • 政治/国会

公明新聞:2015年9月9日(水)付



参院平和安全特委



切れ目のない対応が必要
慶応大学 神保 謙 准教授


湾岸戦争後、過去20数年の日本の安全保障政策の展開は高く評価されるべきと考えるが、今日そこに二つの新しい深刻な問題が発生していると指摘したい。安全保障法制上のミスマッチと、安全保障環境の変化だ。


安全保障上の脅威は国内から日米2国間、アジア・太平洋地域、グローバルへと空間および領域を横断する性格を持つようになってきているものの、現法制は空間が縦割りで、ミスマッチが生じている。


一方、21世紀の日本を取り巻く安全保障の最大の変化と言えるのが中国の台頭だ。いま平時と有事、自衛権と警察権の切れ目に日本の主権を侵害する重大な事態が生じている。また、中国の軍事力の拡大は東アジアの軍事バランスも大きく変化させた。


以上2点が、今日わが国が確固とした安全保障の法制度を策定しなければならないかという重要な根拠だと思う。平和安全法制の最大の目的は、こうした日本の防衛政策にとって重要な(1)グレーゾーン事態(2)重要影響事態と集団的自衛権の限定行使(3)国際平和協力活動―の三つの領域で切れ目のないシームレスな対応をめざす制度を構築することにあると考える。


ただ、関連法案自体は大変複雑になっている。政府・与党は、国民に分かりやすく説明する努力を引き続き継続してほしい。


党利党略より政策議論を
立命館大学 宮家邦彦 客員教授


平和安全法制に反対の方々の主張は安全保障の本質を理解せず、冷戦後の世界の大きな変化を考慮しない観念論と机上の空論だ。キーワードは「抑止」だ。冷戦後25年がたち、各地で物理的な脅威も発生し始めている。


「戦争法案」「軍国主義への道」との主張も多いが本当にそうか。戦前の日本の失敗は、民主主義下で軍隊へのシビリアンコントロール(文民統制)ができなかったからだ。それほど今の日本の民主主義に自信がないのか。私はそう思わない。今回の法案では、平均的なNATO(北大西洋条約機構)加盟国と比べてもはるかに限定的な集団的自衛権しか行使できない。これでどう軍国主義化するのか。


法案が分かりにくいという議論があるが、理由はある。主要国の安保法制が禁止事項の列挙(ネガリスト)なのに対し、日本では実施可能なものを列挙(ポジリスト)し、それ以外できない。臨機応変な対応には、ポジリストを拡大するしかない。1950年代以降の国会答弁の積み重ねを考えれば、ネガリストを採用しないとの判断は正しかった。


現行法では対応できない種類の危機が生まれつつあることは悲しい現実だ。(反対する野党でも)責任ある立場の人ほど、法案が必要だと内々理解しているのではないか。党利党略でなく、現実に即した本音の政策議論をお願いしたい。

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